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「悔しさと焦りと、どうしようかなっていうのと…」錦織圭(35歳)がいま明かす復帰までの“葛藤の日々”「ネガティブな感情はひと通り経験した」
posted2025/02/07 17:02

長きにわたる怪我を乗り越え復活した錦織圭(35歳)が現在の心境を語った
text by

秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Yuki Suenaga
Number1111号に掲載の《[エースの告白]錦織圭「引退は一回リセットされました」》より内容を一部抜粋してお届けします。
全仏復帰までは葛藤の日々
'24年5月の全仏オープンで、錦織圭は'21年全米以来の四大大会出場を果たした。大舞台に戻った元世界4位は、選手仲間に大歓迎されたという。
「トップの選手とは1年、2年くらい会ってなくて、(カルロス・)アルカラスとかも、そんなに話したことはなかったけど、自然に話せた。ライバルではあるけれど、モチベーションをくれる選手たちでもあるので、うれしかったですね。みんなに会えたことと、あの場にいることで、ひとつ、出場した意味はあったのかなと思います」
若手にとって錦織は幼い頃に憧れたスターの一人だろう。対戦してみたい、と復帰を期待した選手もいたはずだ。もちろん、ファンも復帰、復活を待望した。そして、この日をだれよりも待っていたのが本人だった。'23年6月に、下部カテゴリーのATPチャレンジャーで、左股関節と右足首の怪我から1年8カ月ぶりに復帰。だが、左ひざ痛で同年7月から再び離脱した。'24年3月に米国・マイアミで復帰したが、見切り発車は失敗に終わる。
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「あんまり動けないし、ひざもちょっと痛かったけど、無理やり出ました。で、また2カ月休んで」
完治するまで休むべきか、実戦で試合勘を取り戻しながら完治を待つか。全仏までは葛藤の日々だった。大会にエントリーしても直前に出場を取り消す事態が続いた。
「出れそうだけど、やっぱり練習していると痛い、みたいなのがずっと続いていた。悔しさと焦りと、どうしようかっていうのと、ネガティブな感情はひと通り経験しましたね。悔しいのが大きかった。これだけ頑張っても治ってくれないっていう」
全仏出場を決めたのは1回戦の2日前
復帰を果たした全仏も、出場を決めたのは1回戦の2日前だった。
「思い切って出ました。5セットマッチの大会で復帰するのは絶対に良くないと思ってた。思ってたけど、どうにもこうにも、前哨戦に合わせられなかったので。マイアミのこともあって、無理して出てまた休むことになるかもしれないという不安もありましたけど」
故障再発の不安、そして、今のツアーで戦えるのかという自分への疑念。