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甲子園の風BACK NUMBER
“高校生の木製バットが折れる”珍事も…なぜ「低反発よりも打球に伸びがある」センバツ球児は本音で語ったか「まずは飛ばせるように」
text by
間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/10 11:10
センバツで木製バットを使用した青森山田・對馬陸翔。彼らや“木製経由で金属使用”に至った選手にも話を聞いた
「バントは木製の方がやりやすいです。初回は上手く気持ちが入っていませんでした。バットや技術の問題ではなくメンタル的な部分が失敗の理由です。延長10回は練習通りに転がそうと意識して、狙い通りのバントができました」
最後まで決断に迷いながら、最終的に新基準のバットを選択した広陵の只石貫太捕手も同じ見解だ。木製バットでバントをした経験があり「打球の勢いを殺しやすくて、低反発バットよりバントしやすいです」と話す。
折れたバットと…“20グラム”軽くしたバット
この試合では、高校野球では珍しいシーンがあった。
4回裏、青森山田の攻撃。先頭の對馬はカウント2-2から外角低めのスライダーをスイングした。ボテボテの打球がショートへ飛び、マウンド近くにはバットの先端部分が転がった。練習では2度経験しているが、試合でバットが折れたのは初めてだったという。
對馬は甲子園に木製バットを10本持ち込んだ。重さは890グラムと870グラムの2種類。1回戦の京都国際戦は890グラムのバットで臨んで4打数無安打に終わったことから、広陵戦は20グラム軽いバットを手にした。
「甲子園でプレーする緊張もあって体が思うように動かない分、バットを軽くしました。スイングスピードもスイング軌道も普段通りに修正できたと感じました。ただ、870グラムのバットは2本しか持ってきていないので、次の1本が折れたら890グラムに戻さないといけません」
木製は「逆方向への意識が強くなります」
對馬は8回1死満塁から同点の2点タイムリーヒットを打っている。3打席目までの配球が外角中心だったことから初球は外角にしぼり、狙い通りスライダーを逆らわずにライト前へ運んだ。ややバットの先だったが、今度はバットを折らなかった。
木製バットの感覚と甲子園の雰囲気を掴んだ對馬は、中央学院との準々決勝でも3安打と活躍した。試合数を重ねるにつれて、バットに慣れてきたと手応えを口にしている。
木製バットを使い、對馬は注目される存在となった。結果が出なければバットのせいと指摘されかねない状況にも、「周りの声は気にしませんでした。打てば良いわけですから」と自らの考えを貫いた。練習では新基準のバットも試していたが、打感が合わなかったという。“飛ばないバット“の認識が打撃フォームを崩す要因にもなった。