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「絶対に本塁打だと。助けられましたね」“飛ばないバットへの本音”…投手・守備陣と名将にセンバツで聞いた「意外と楽ではないんです」

posted2024/04/10 11:11

 
「絶対に本塁打だと。助けられましたね」“飛ばないバットへの本音”…投手・守備陣と名将にセンバツで聞いた「意外と楽ではないんです」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

今センバツから採用された“飛ばない”新基準バット。選手、監督が語った“ホンネ”からあらためて野球を検証してみる

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間淳

間淳Jun Aida

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“飛ばないバット”とも称された「新基準バット」が採用された今春のセンバツでは、大会通算本塁打が3本にとどまるなど大きな影響をもたらした。球児たちは何を感じてプレーしていたのか。打撃、守備の両視点から、彼らの語った“本音”で振り返る。(全2回の第2回/第1回も)

 長打が出ない。外野手の守備位置が極端に浅い。今春の選抜高校野球大会から導入された新基準のバットは高校野球を大きく変えている。その影響は打撃と外野守備だけにとどまらなかった。バッテリーや内野手のプレーや考え方も変化している。

増えたスローカーブと緩いチェンジアップ

 今大会目立ったのは緩いカーブ。特に左投手が投球の比率を高めていた。山梨学院に敗れた創志学園・門馬敬治監督も相手投手のカーブを敗因に挙げていた。

「緩いカーブが格段に増えました。相手バッテリーに、はまりました」

 山梨学院の先発左腕・津島悠翔投手はスローカーブを操った。電光掲示板に表示される球速は80キロ台。遅すぎて計測できないのか、球速が表示されないカーブもあった。創志学園・門馬監督は序盤、スローカーブを捨てるように指示した。だが、制球が良く、予想以上に多投されたため、中盤以降は戦術を変更。選手に「狙っても構わない」と伝えたが、各打者はカーブの残像で直球に振り遅れ、普段のスイングをさせてもらえなかった。

 この前日、星稜・佐宗翼投手と八戸学院光星・洗平比呂投手の両左腕が先発した試合は、カーブが存在感を放った。象徴的だったのは2回の攻防である。

 佐宗は1死から八戸学院光星・住本悠哉選手に対して2球連続で100キロ台のカーブを選び、3球目に132キロの直球でサードフライに打ち取る。その裏、洗平は先頭の星稜・佐宗に2球連続でカーブを投げてピッチャーライナーに打ち取る。さらに、続く吉田大吾選手には4球中2球がカーブ。レフトフライに打ち取った中谷羽玖選手にもカーブを2球投じた。

 佐宗をリードして勝利に貢献した能美誠也捕手は、緩いカーブがポイントになると踏んでいた。直球を中心にした田辺との初戦から配球をがらりと変えた。ヒントは八戸学院光星が延長11回タイブレークの末に勝利した関東一との1回戦にあったという。

「関東一の畠中(鉄心)投手が緩いチェンジアップを使って、八戸学院光星の打者を抑えていました。八戸の打者は打球を飛ばそうとしているのか振りが大きいと感じたので、球速を落とした球でタイミングを外そうと考えました」

間違いなくスタンドに入ったと…低反発バットのおかげ

 本来、球速が遅い球を使うのは勇気がいる。狙われると長打のリスクがあるためだ。だが、能美は自信を持ってカーブのサインを出していた。

【次ページ】 「意外と楽ではないんです」と捕手が語ったワケ

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