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「あの日、クラブは消滅寸前でした…」楽天・三木谷浩史社長“涙の20分間スピーチ”がヴィッセル神戸を変えた「負債16億円“どん底”から優勝」
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byGetty Images
posted2024/03/30 11:08
昨年11月、ヴィッセル神戸の優勝セレモニーでの三木谷浩史氏。クラブの経営を引き受けて20年目にJリーグ初優勝
「この20年間で三木谷オーナーがどれだけクラブに投資されたか……見当もつかないですが、相当な金額でしょう。ですが、ときに否定的なことを言われたり、降格危機を理由に頭を丸刈りにされたこともありましたよね。そういうことを思い出しても、本当にすごいなと思いますし、そんなオーナーが現場に来て『勝負の世界だから“勝ち負け”はある。でも、最後はみんな一丸になって戦ってほしい』と涙ながらに訴えられたら、選手もスタッフもやらないわけはないですよね」
神戸の前身は川崎製鉄のサッカー部である。元々は岡山県倉敷市に拠点を置いていたが、1995年に神戸にホームタウンを移し、現在のチーム名に変更。当初は神戸市などが出資する市民クラブだったが、2003年に経営危機に陥る。当時の報道では「Jリーグに激震。神戸が負債16億円で民事再生法、身売りへ」と騒がれた。
そこで楽天グループ代表の三木谷オーナーが経営権を取得し、自らの資産管理会社の運営を経て2015年から楽天グループの傘下となった。破産寸前だったところを、オーナーが私財を投じて経営を支えてきたのだ。
疑問の声に…「バルサ化はやめていない」
近年はその三木谷オーナーの意向もあって、イニエスタのみならず、ダビド・ビジャ、セルジ・サンペール、トーマス・フェルマーレン、ボージャン・クルキッチといずれも元バルセロナの選手を獲得するなどバルサ化を進めてきたが、すでに全選手が退団した。永井はクラブ方針への疑問の声にこう応えた。
「バルサ化はやめたのか、とも散々言われました。ただ、バルサ化は単に選手を獲得するだけではないですから。
たとえばバルサのラ・マシアと呼ばれた選手寮にヒントを得た三木谷ハウスと呼ばれるユースチームの選手らが暮らす立派な寮ができて、(ハイブリッド芝2面、人工芝1面と)グラウンドも整備された。いまのアカデミーには将来楽しみな選手が多く集まってきているんですよ。そういう意味でバルサ化も決してやめたわけではないんです」
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「まるで、黄金期のヴェルディでした」……続きでは永井SDが、ヴィッセル神戸のロッカールームでの“事件”を明かします。
<続く>