JリーグPRESSBACK NUMBER
「あの日、クラブは消滅寸前でした…」楽天・三木谷浩史社長“涙の20分間スピーチ”がヴィッセル神戸を変えた「負債16億円“どん底”から優勝」
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byGetty Images
posted2024/03/30 11:08
昨年11月、ヴィッセル神戸の優勝セレモニーでの三木谷浩史氏。クラブの経営を引き受けて20年目にJリーグ初優勝
「そもそも三木谷オーナーは月の半分くらいは海外出張だったり、普段は15分単位でスケジュールがびっしり組まれているほど忙しいんです。昨季のリーグ最終節のガンバ戦後も、優勝報告会に『少しだけでもぜひ顔を出してください』とお願いしたところ、本当に来てくれましたが、帰りは神戸空港からプライベートジェットでそのままインドへ飛んでいましたから」
そんな三木谷オーナーが選手・スタッフの前で“涙のスピーチ”をしたのは2022年の夏前のこと。優勝候補と見られた神戸は前半17試合をわずか2勝で最下位。残留圏まで最大勝ち点8差とどん底にいた。
ある夜、永井の携帯が鳴る。
「夜中に三木谷オーナーから連絡がありました。『明日、ミーティング何時から?』と。それで急遽朝イチの飛行機で、神戸空港に7時に着いて。そのままクラブハウスに来て、選手・スタッフ全員の前で泣きながら話をされて。あの話はほんとに感動しました」
涙のスピーチは20分間ほど続いたという。
「楽天を創業したときの話、2004年のクラブの経営危機。そのとき地元出身だった縁で私財を投じて出資された、と。『あのとき私が決断しなければ……クラブは消滅寸前でした』という話は選手たちにも響いたはずです。
楽天のビジネスモデルを考えると、『10円、100円の利益の積み重ねを皆さんにお支払いしています』と。『あと一歩、もう少しというところをぜひ皆さん一丸になってやってもらえませんか』と涙ながらに訴えていました」
負債16億円の“どん底”だった
このスピーチが絶望的な状態を脱する機会となり、その後チームは5連勝も記録。翌シーズンの初優勝に向けての転機になった。永井はこう語る。