日本のメディアから次戦についてさらに問われても、答えは同じである。

「今後のことについて、私がこの場所で申し上げるのは控えたい」

「申し訳ない…」なでしこに敗れた女子監督は涙

　ヨーロッパや南米では、監督と地元メディアが日頃から激しくやり合う、というケースがある。地元メディアが海外の試合まで同行してきても、「あなたの質問は受けつけない」と突っぱねる場面がある。

　記者会見の冒頭に、監督（またはチーム側）から質問の数を制限されることもある。大抵はチーム状態が良くない場合で、批判的な質問を浴びることが想定されるからだ。制限内の質問に対しても、それは答えられないとか、ワンフレーズで片づけたりする。

　サッカーは北朝鮮の国技だ。国家元首の関心も高い、との報道もある。チームを率いる監督が計り知れない重圧を背負い、発言に慎重になるのは想像に難くない。自分たちに好意的と思われるメディアを丁重に扱うのも、内向きな視線に基づいているのだろう。2月のパリ五輪最終予選でなでしこジャパンに敗れたリ・ユイル監督が、「いい結果をもたらせず、大変申し訳ない気持ちでいっぱいです」とマイクの前で涙をこぼしたのは、彼らが背負う重圧の大きさを示すものだったのかもしれない。

2月28日、パリ五輪最終予選でなでしこジャパンに敗れた北朝鮮のリ・ユイル監督は涙を見せた　©JFA/AFLO

　そう、パリ五輪最終予選も北中米W杯予選も、北朝鮮は負けているのだ。チームが勝っていたら、監督はもう少し饒舌だったのか。北朝鮮が勝利したら、監督たちは記者会見で何を語るのか。アウェイチーム側のメディアから鋭い質問をされても、誠実に答えるのだろうか。26日の平壌開催がなくなった“次の日本戦”までは、同じような対応でも構わないが。