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「日本人記者の質問には答えない」「まさかの平壌開催中止にも表情を崩さず…」日本代表が苦戦した北朝鮮監督の“不敵な無表情会見”
posted2024/03/23 17:02
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
JFA/AFLO
何というか、奇妙な時間なのである。
サッカー北朝鮮代表の記者会見だ。
日本メディアの質問には“塩対応”の一方で…
3月21日に北中米W杯アジア2次予選の日本対北朝鮮が行なわれ、日本が1対0で勝利した。試合後には記者会見が開かれ、シン・ヨンナム監督が登壇した。会見はアウェイチーム、ホームチームの順番で進行される。
日本代表やJリーグの試合後の記者会見では、最初に監督が試合を総括するのが通例となっている。シン監督も「内容としては良かったと思います。サッカーは勝つこともあれば、負けることもあります。今日の経験を生かして、準備をしていきたい」と話した。
ここからは質疑応答だ。指名された記者は、自らの所属と名前を明らかにする。
この日最初に指名されたのは、日本メディアだった。試合内容に加えて平壌のキム・イルソン競技場の雰囲気についての質問だったが、シン監督は冒頭の総括と似た内容を話すにとどめた。
敗れたあとの監督が、最小限のコメントしかしないことはある。終了のホイッスルを聞いてから、早ければ10分ほどでテレビカメラの放列の前に座るのだ。結果を消化しきれていなくてもおかしくはない。その結果として、当たり障りのない発言に終始したり、無味乾燥な言葉を並べたりするのも、監督としての身のこなし方とも言える。苛立ちをあからさまにする監督や、会見への出席を拒否する監督もいるから、口数が少ないぐらいでは責められない。
日本メディアの次に指名されたのは、朝鮮新報の記者だった。在日本朝鮮人総聯合会の機関紙である。質問者は朝鮮語でチームの戦いぶりを賞賛し、国立競技場で応援した同胞にひと言お願いしたい、と続けた。
シン監督は「同胞のみなさんにいい結果を届けたかったが、そうはならなかった。大変申し訳なく思います」と切り出した。ゆっくりと丁寧な通訳が、指揮官の心の痛みを際立たせる。「ぜひ次の試合に期待してほしい。次はいい成果をあげて、同胞のみなさんを喜ばせたい」と、身振り手振りをまじえて熱っぽく語った。