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「まさか決めるとは…」なでしこ北朝鮮戦前日に笑っていたDF高橋はな24歳「池田太監督は熱男ですが」“TVが報じない”ヒロインの素顔と伏線
text by
佐藤亮太Ryota Sato
photograph byNaoki Morita/AFLO
posted2024/03/01 17:01
北朝鮮に勝利した「なでしこジャパン」。先制ゴールで勢いをつけた高橋はなの“素顔と伏線”とは
2022年11月、スペインでの代表合宿で負傷し右膝前十字靱帯損傷で全治8カ月の診断を受けた。やっとランニングを始めたのが4月下旬で、練習に一部合流できたのが5月上旬。リーグは残りわずか。目前に控えるW杯に向けて、復帰は無理かと思われたものの、WEリーグ最終節の後半25分から出場すると、3日後のW杯メンバー発表で“サプライズ選出”となった。
当時、会見で高橋はこう思いの丈を語っていた。
「スペイン遠征から帰国してすぐに手術が決まってから、いくつかの選択肢がありました。でも、わたしはできることをやりたかった。(ワールドカップを)諦める理由にはならないと感じました。半年先のことを夢見てやっていたところでいまが変わるわけではありません。日々を大切に毎日、積み重ねるしかない、その積み重ねの先に今日があります」
池田監督は「ずっと熱男ですが…この監督のために」
当時の高橋を支えたものとして、池田監督の存在があるだろう。指揮官は浦和のホームゲームに何度となく視察に訪れていて、気にかけていたのは間違いない。W杯後も負傷離脱を除いて、招集メンバーの常連となっていて、その信頼の厚さが伝わる。
パリ五輪切符を手に入れた瞬間、監督と選手が喜び合う様子をテレビ中継で目にした人々は多かっただろうが、選手の証言からも、池田監督との良好な関係性をうかがい知ることができる。
「太さんは熱さをもっていますし、常にチーム、選手のことを考えてくれます。その熱さのなかに繊細さというか……ひとつひとつの言葉や行動にこもっていますね。またこのチームで戦える、その喜びは大きいですね」(長野風花)
「熱さはU-20W杯のときと変わりません。試合当日にはやってきたことをすべてやりきる気持ち、戦う気持ちを出しますが、そのなかに冷静さを感じますね」(南)
そして何より、高橋はこのように話していた。
「ずっと熱男(あつお)ですが、その熱さのなかに選手を、チームをよく見ているなという冷静さが常にあります。
この監督のためにプレーしたい、そう思える監督です」
今のなでしこジャパンの強さが詰まっている——そう実感する高橋のプレーぶりと言葉だった。