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「まさか決めるとは…」なでしこ北朝鮮戦前日に笑っていたDF高橋はな24歳「池田太監督は熱男ですが」“TVが報じない”ヒロインの素顔と伏線 

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佐藤亮太

佐藤亮太Ryota Sato

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photograph byNaoki Morita/AFLO

posted2024/03/01 17:01

「まさか決めるとは…」なでしこ北朝鮮戦前日に笑っていたDF高橋はな24歳「池田太監督は熱男ですが」“TVが報じない”ヒロインの素顔と伏線<Number Web> photograph by Naoki Morita/AFLO

北朝鮮に勝利した「なでしこジャパン」。先制ゴールで勢いをつけた高橋はなの“素顔と伏線”とは

「絶対、蹴ることはないんで(笑)」

 その時はこう話していたが――第2戦前日に開かれた公開練習後のこと。膠着した試合を打開するゴールは、高橋自身がフリーキックを蹴るなど、意外性のあるところから生まれるのではないかと尋ねた。するとこのように返ってきた。

「もう勝つしかないので、言うことはありません。ただもともと“安パイなプレー”ができないタイプなので(笑)。リスクを冒してプレーしたい。まあ、普通にやって勝てる相手ではないのですから」

 リスクを冒してゴールを決める。それが伏線になったからこそ、冒頭に記した「まさか決めるとは」の心境だった。

高橋、熊谷、南の3バックにある“共通点”とは

 高橋はゴールだけではなく、守備でも良い働きを見せた。

 試合前は4バックが予想されたが、3バックへ変更。池田太監督は試合後会見で「チームの幅を広げようというストーリーは頭のなかにあった」と明かしたが、これが功を奏した。相手のロングボールに対して高橋、熊谷、南萌華の3バックが跳ね返したうえで、セカンドボールを回収。良い守備から良い攻撃へとつなげた。

「3枚のシステムはワールドカップでもやってきました。その分、引き出しも多く、お互いに共通認識も取れています。システムにとらわれすぎず『このパターンにしよう』という考え方なので、そこまでてこずらず、スムーズにできました」

 終盤に1点を返されたものの、90分を通して破綻するシーンはほぼなかった。そんな堅守を支えた高橋、熊谷、南はキャリアの中で浦和レッズレディースに所属したという共通点がある。

 熊谷は2009年常盤木学園から浦和に加入。女子W杯でなでしこジャパンが世界一になった直後の11年7月、ドイツのフランクフルトに移籍した。その後、16年4月に南が、同年6月に高橋が浦和のトップチームに選手登録された。このとき高橋はFW登録。DFにコンバートされたのは17年のこと。翌18年にはフランスで開催された U-20女子W杯で池田監督率いるU-20日本女子代表でCBコンビを組み、初優勝に導いた。さらにWEリーグ2021‐22シーズンでは、20試合中、19試合にフル出場してチームも2位と奮闘した。

 相棒の南は自身が慕う熊谷を追いかけるように代表入りし、22年7月にASローマ(イタリア・セリエA)に完全移籍。去年6月から熊谷とチームメイトとなった。つまり南を媒介し、熊谷と高橋が連動したことが円滑な守備を生んだといえる。パリ行きを決めた瞬間、3人が喜び、肩を組みあったのが象徴的なシーンと言える。

全治8カ月の重傷を負ったもののW杯選出

 一見、順調に歩んでヒロインとなったように見える高橋だが、1年前の今ごろを思い出せばよくぞここまで、と思える。

【次ページ】 池田監督は「ずっと熱男ですが…この監督のために」

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