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「まさか決めるとは…」なでしこ北朝鮮戦前日に笑っていたDF高橋はな24歳「池田太監督は熱男ですが」“TVが報じない”ヒロインの素顔と伏線
posted2024/03/01 17:01
text by
佐藤亮太Ryota Sato
photograph by
Naoki Morita/AFLO
「まさか決めるとは……」
目の前に広がる光景に息をのんだ。
2月28日、国立競技場で開催されたパリ五輪女子サッカーアジア最終予選、なでしこジャパン対北朝鮮女子代表。第1戦をスコアレスドローで終え、勝てば五輪出場が決まる第2戦、前半26分に“そのシーン”は生まれた。
左サイドMF北川ひかるのフリーキックからDF熊谷紗希を経て、FW上野真実が頭で折り返し、FW田中美南がヘディングシュート。バーに当たったこぼれ球の軌道の先にいたのは、DF高橋はなだった。左足で押しこみ、2大会連続6度目のオリンピック出場を引き寄せる先制ゴールとなった。
ホントに決まってよかったなーって
「ものすごく嬉しかったです。ホントに決まってよかったなーって」
歓喜の輪が解けた約1時間後、約200人いたメディアの熱気がすっと冷めたミックスゾーンで高橋は先制点を振り返った。その表情は安堵に満ちていた。負ければ終わりの大一番。どれだけ切迫していたか。高橋と同じ三菱重工浦和レッズレディース(以下・浦和)の清家貴子はこう話す。
「勝てたからいいようなものの、もし負けていたらどんな気持ちになっていたか、それを考えただけでも怖かったです。とにかくホッとしました」
なでしこジャパンは想像以上にプレッシャーがかかっていた。まして第1戦、守備では北朝鮮の攻撃を持ちこたえたものの、攻撃は単調さ、手詰まり感があった。だからこそ高橋の先制点は貴重だった。
高橋本人は「セットプレーの準備が結果につながった」と明かしたが、簡単なゴールではない。それでも「いいところにこぼれてきただけ」とこともなげに言えるのはもともとFWだったからだ。
「身体が小っちゃくて、超ドリブラーで、めちゃめちゃうまかった選手」
そう証言するのは長谷川唯である。
先制後、高橋に勢いよく抱きついていたシーンが印象に残る人も多いだろうが――高橋は埼玉県川口市、長谷川は隣接する戸田市出身である。長谷川によれば、自身が中3で高橋が小6のときに対戦した頃の印象が残っている。つまり、高橋にはFWの嗅覚が残っていたのだ。
高橋のゴールには練習での“伏線”があった
そんな高橋の得点、実は予言めいたものがあった。
2月19日の公開練習に遡る。この日、24回目の誕生日を迎えた高橋は、練習でペナルティーエリア外から右足で強烈なシュートをゴール右上に突き刺していた。