ぶら野球BACK NUMBER
「野茂は太りすぎや」「キミはエースじゃない」監督も球団幹部も苦言…なぜ野茂英雄は近鉄と決裂した? 野茂が怒った“あるコーチの退団”
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byKYODO
posted2024/03/03 17:04
1992年オフの契約更改での近鉄・野茂英雄。当時日本人ピッチャーで最高給となる推定1億1600万円でサイン
12月13日の一度目の交渉では、野茂サイドが希望した複数年契約は球団側に却下され、1000万円ダウンの年俸1億3000万円の単年契約を提示される。そして、21日の二度目の交渉は40分で決裂し、野茂の「サインしていません。複数年契約以外の要求も出しました。内容は今はいえません」という会見から、スポーツ新聞には「野茂大リーグ入り直訴」や「代理人交渉を要求」などの見出しが躍り、騒ぎは近鉄が予想だにしなかった方向へと展開していく。
この詳細を報じる「週刊ベースボール」1995年1月23日号では、黒幕は「かつて日本の球団でプレーしたこともあり、血のつながりはないが父親が球界の大物といえば、事情通ならすぐに名前と顔が浮かんでくる」と名前こそ出していないが、エージェントの団野村の存在にも触れている。任意引退選手は旧所属球団の同意がなければ他球団でプレーすることはできないが、米国行きとなればその限りではないという野球協約の抜け道を突く流れに、「ウチと契約するしかないじゃないか」と高をくくっていた近鉄側も焦った。
<続く>
「起死回生:逆転プロ野球人生」(新潮新書)。戦力外通告、飼い殺し、理不尽なトレード……まさかのピンチに追い込まれた、あのプロ野球選手は人生をどう逆転させたのか? 野茂英雄、栗山英樹、小林繁、矢野燿大らのサバイバルを追う(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)