サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
イラン主将「前半は…あえてね。目論み通りだ」アジア杯取材・英国記者だけが知る“日本代表攻略法”の証言「史上最強説は危険だった」
text by
マイケル・チャーチMichael Church
photograph byMutsu Kawamori
posted2024/02/10 17:01
三笘薫とデュエルするイラン主将ジャハンバフシュ。決勝PKを決めた彼の言葉から“イランの戦略”がクッキリとわかる
イランとの対戦は、常に厳しいものとなる。1976年以来、4度目の優勝を狙う彼らは、欧州でプレーする選手と、ハングリーな国内組で構成された手強いチームだった。
おそらく一般的な解釈としては、前半は日本が主導権を握り、後半にイランが巻き返したというものだろう。ただしイランのキャプテンを務め、逆転のPKを決めたアリレザ・ジャハンバフシュは次のように明かした。
「前半はあえて日本にボールを握らせたんだ」
フェイエノールトに所属する30歳のアタッカーはこう続ける。
「失点以外、自分たちの目論み通りだった。ポゼッションで下回っても、うちのGKが脅かされた場面はあまりなかったよね。そして後半に圧力を増し、然るべき結果を手にしたんだ。日本のような偉大なチームを相手に、あれほど思い通りのパフォーマンスができたチーム・メッリ(イラン代表の愛称)を誇りに感じている」
では、日本の問題はどこにあったのか
では、日本の問題はどこにあったのか?
まず、彼らに油断が一切なかったとは言えないだろう。ここ1年ほどの間に、ドイツを2度も下し、スペインにも土をつけた日本は、アジアカップで悠々と頂点に駆け上がると見られていた。それは選手や監督ではなく、メディアやファンが思っていたことだとしても。
日本の親しい友人によると、どうやら日本国内では今の代表を“史上最強”と呼んで持て囃していたらしい。長い付き合いのある彼と口を揃えることになったが、それは危険だ。
今の日本代表の選手たちの多くが、いかに足元を見つめられるプロフェッショナルだとしても、そうしたムードはどこかで弛緩した空気を作ってしまう。ポジティブに勢いをつけるよりも、逆に仇となってしまうことの方が多い。過去のイングランド代表、ポルトガル代表、ベルギー代表の“黄金世代”が、A代表では何も勝ち取れなかったように。
ピッチ上で苦境に陥った時、必死さや懸命さがあまり伝わってこないのは、強者が敗れる時によくあるシーンだ。厳しい時にこそ、全体を奮い立たせられるリーダーが、少なくとも今大会の日本代表にはいないように見えた。
伊東純也のスキャンダルより、相手の研究と森保采配が
伊東純也のスキャンダルと離脱の影響はあったかもしれないが、筆者はそれほど大きなファクターではなかったと考える。それよりも日本を研究し、真摯に戦った相手を称えるべきだろう。
森保監督のチームセレクションと采配にも疑問が残る。