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イラン主将「前半は…あえてね。目論み通りだ」アジア杯取材・英国記者だけが知る“日本代表攻略法”の証言「史上最強説は危険だった」
posted2024/02/10 17:01
text by
マイケル・チャーチMichael Church
photograph by
Mutsu Kawamori
アジアカップが始まる前は、誰もが日本を優勝候補に挙げた。しかし今回のカタールでは、最高の状態を一度も見せることなく、イランとの準々決勝で覇気なく惨敗した。
ここに至るまでの1年と少しの間、日本はほとんどの試合──昨年3月のウルグアイ戦とコロンビア戦を除く──で、見事な内容を披露したうえで好結果を手にしていた。大会前に9連勝を収め、その間に39得点を重ねた森保一監督のチームについて、ドーハに集まった各国のジャーナリストたちは皆、好意や尊敬、あるいは畏敬をもって語っていた。なかには、FIFAランキング17位は日本の実力を正しく評価したものではないと言う人もいた。アジアの盟主、日本が今大会で最多優勝回数を5に更新する──そう信じて疑わない人が多かった。
トルシエが見せた“格好の日本対策モデル”
ところが蓋を開けてみると、ベトナムとの初戦から、前評判とは異なる姿を見せた。かつて日本を率いたフィリップ・トルシエ監督の下、目覚ましい進歩を遂げているとはいえ、まだまだ成長段階にある相手に2失点を喫したことは予想外だった。
「あえて受け身に回りたいと思う」と68歳のフランス人指揮官は戦前の会見で言った。「そして日本の組み立てを妨害し、繋ぎを壊し、我々の決意を知らしめる。そう、日本がドイツを悩ませたように」
ベトナムのそんな試みは一定の成果をもたらしたが、日本を下すまでにはいかなかった。ただし彼らに続くチームにとって、その戦いぶりは格好のモデルとなった。この初戦を見て、森保監督のチームのウィークポイントを知った敵将は多かったはずだ。そしてベトナムより強いチームが、日本により大きなダメージを与えていった。
次戦の前半は、まさにイラクがその成果を得た45分間だったと思える。過去にFCバルセロナやスペイン代表でアナリストやアシスタントコーチを務めたヘスス・カサス監督は、日本を丸裸にしたうえで完璧にプランを遂行し、内容にふさわしい2−0のリードを奪った。
率直に言って、この試合ではすべての側面でイラクが上回っていた。特にセカンドボールには、研ぎ澄まされた集中力とこれ以上ないほどの熱意で食らいつき、逞しいフィジカルをぶつけて自らのものとしていた。そして2点を先行した後は、決勝戦のように気持ちを込めて守った。
イランの主将が明かした「目論み通り」の戦略とは
続くインドネシア戦とバーレーン戦では、メンバーを大幅に変え、システムにも調整を加えた日本が連勝に成功。それでも問題が完全に解決されたようには見えなかった。