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「クビにしてもらっていい」「俺と社長でカラオケに」ポステコグルーと築いた特別な関係性…黒澤良二マリノス前社長に聞く“プレミア名将の素顔”
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images/Kiichi Matsumoto
posted2024/02/12 11:05
横浜F・マリノスでアンジェ・ポステコグルーを全面的にサポートした黒澤良二前社長。現在もトッテナムの試合は欠かさずチェックしているという
優勝後はバタバタしすぎて、みんなで『We Are The Champions』を歌うことは叶わなかった。それでも、黒澤は心のなかで誇りを感じながら口ずさんでいた。ひょっとしたらボスも、そうだったかもしれない。「We did it together」と言ってくれたのだから。
「アンジェのサッカーを突き詰めてプレミア制覇を」
ボスは2021年シーズン途中まで指揮を執り、セルティックからのオファーを受諾してF・マリノスを旅立っていった。
黒澤がマスカットに白羽の矢を立てたのも、ボスと同じようにサッカーへの並々ならぬ情熱を感じたからであった。異なる監督で2度リーグ制覇を果たした社長はクラブ史上、初めてである。
社長を退任してからは、一人のサポーターとしてアウェイまでF・マリノスの応援に駆けつける日々だ。もちろん、トッテナムの試合をチェックすることも欠かさない。
「F・マリノスのときと同じような失点だったり、負け方だったり、点をいっぱい取って勝ったり……。僕も当時を思い出しながら観ています。Jリーグとプレミアではレベルが違うとしても、やっぱりF・マリノスでの経験が活きているんじゃないかな、と。彼は昔、言っていました。“勝つためにはこのやり方が一番なんだ”と。面白くてワクワクするアンジェのサッカーを突き詰めて、プレミアを制してほしいと思っています。そのときに“F・マリノスでの成功体験が礎になった”みたいなコメントが出てきたら、最高なんですけどね(笑)」
間近で接してきた一人としてボスにも、このサッカーにもまだまだ無限大の可能性を感じている。その先にはきっと栄光が待っている。黒澤はワクワクしながら、その日が来ることを心待ちにしている。
<#1、#2とあわせてお読みください>