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「学法石川が遅れています!」NHK実況も困惑…2015年の学法石川“奇跡の世代”優勝候補だった都大路で起きたこと「箱根より報道陣が多かった」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/20 17:01
ガクセキ“黄金世代”が優勝候補として臨んだ2015年の全国高校駅伝。結果は予想外のものだった
周囲から見ても、本人たちにしても、自他ともに認める「過去最強」のメンバーが揃ったその年のガクセキ。だが、結果を先に言えば、12月の全国高校駅伝は7位に終わる。優勝はおろか、表彰台をも逃すことになった。
1区に抜擢された阿部は、トップと40秒差の区間10位でスタートした。
「1区で出遅れるのはある程度予想していた」と監督の松田和宏が言うように、ここまでは想定内だった。実は、阿部は調子が下降気味だったため「区間10位でいいよ」と事前に伝えていたのだという。
「ハイペースのレースになり、なんとか粘ったんですけど、僕自身、もっと上位を狙っていたので悔しかったですね。せめて区間5位以内で渡せたらまた違った結果になっていたのかなと思います。区間10位はたしかに最低限かもしれません。でも、自分の中では“外してしまった”っていう思いがありました。それまで駅伝ではあまり外したことがなかったのですが……」
想定内とはいえ、阿部には悔しさが残った。
ただ、続く2区の田母神、3区の遠藤、4区の相澤と力のある選手が並んでいた。後続が盛り返してくれると信じてタスキをつないだ。それは指揮官も同じだった。
「1区で遅れても2区で挽回し、3区でトップに立てる」
そんな青写真を描いていた。
2区での仕切り直しに失敗…悪い流れを立て直せず
しかし、悪い流れとは伝播するものなのだろう。
「田母神は結構入れ込んでいる感じでしたね。『あまり飛ばすなよ』と言ったんですけど……予想通り、飛ばしましたね」
指揮官の悪い予感は的中する。
仕切り直しを託された2区の田母神は、ターゲットタイムに区間記録と同じ7分55秒を掲げていた。勢いよく飛び出し、中間点を3分56~57秒で通過。ここまでは想定どおりだった。
想定外だったのは、これほどハイペースで突っ込んだのに、前を走っていた九州学院の高田凛太郎(東海大→プレス工業)になかなか追いつかなかったことだ。高田にはインターハイで勝利していた経験があったにもかかわらず、この時の高田の走りは夏とは全く違って見えた。なかなか詰まらない差に、焦りが生じる。結局、田母神は終盤に入って失速してしまった。