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「今が一番いい!」南野拓実29歳が笑って懐かしむ“ハタチの誕生日”…アジア杯2発もスゴいが「不遇のカタールW杯」を独自視点で再評価
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2024/01/17 17:40
カタールW杯の南野拓実。当時は「メーンキャスト」的な扱いを受けていなかったが、アジア杯での活躍を受けて今こそ再評価したい
正しく理解されなかった原因の大部分、99.9%を占めているのは、筆者を含め、当時きちんと報道できなかったメディアの責任である。サッカーを表層的な現象として捉えられなかったからであり、これについてはただ反省するだけだ。
ただ、残る0.1%は……南野が混迷のなかにいた部分はあるかもしれない。
あらためて、考えてみてほしい。南野の最大の良さは何か?
セレッソ大阪のコーチ時代に香川真司、乾貴士、清武弘嗣、柿谷曜一朗、南野らを指導し、現在はセレッソの監督を務める小菊昭雄はこう話している。
「技術的に言うと、真司や曜一朗の18歳のときのほうが上だし、繊細なボールタッチやパスの精度などを比較したら、彼らのほうが優れていると言えることはたくさんある。
でも例えばゴールに向かう姿勢、シュートテクニック、シュートを決めるセンスを含めたトータルで考えると、一番怖い選手は拓実なんです」
利他的な姿勢と、エゴイスティックなゴールへの渇望
南野の良さは、チームや仲間のための献身的なアクションに100%の力を注げる一方で、ゴールを強引にこじ開けられるところにある。
利他的な姿勢と、エゴイスティックなまでにゴールを目指す姿勢。
一見すると矛盾しそうな資質が、南野のなかでは両立している。だから彼は、長く第一線で活躍してこられた。
しかし、カタールW杯の最中、南野の良さは失われていた。
チームのために行動する姿勢は変わらなかったが、ゴールハンターとして相手に脅威を与える部分は消えていた。現地で南野と同じ空気を吸い、会話のキャッチボールをしていれば、それを感じずにはいられなかった。
もちろん、これはどちらの選手が上か下かではないが——かつてブラジル代表に0−4で敗れてなお、ある種のハッタリを内包しながら「可能性はある!!」と気勢を上げていた本田圭佑とは違うパーソナリティだ。
ただ、報道する側としても心のどこかに、本来の南野の財産である「ギラギラ感が出ていないな」という想いがあったことも関係しているのかもしれない。
代表復帰以降、ポジティブな風を吹かせている
南野は、W杯直前のシーズンで移籍したASモナコでは思うようなパフォーマンスからは程遠かった。あるいは、森保一監督が就任してから最多ゴールを決めてきたにもかかわらず、W杯前の1年間の代表戦でわずか1ゴールしか決められなかったのだから。
しかし、迷いを抱えて、本来の良さを失っていた南野はもう、いない。