箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「お前らは中大の恥だ」という電話も…箱根駅伝の名門“まさかの予選落ち”、1年生主将&副主将が直面した伝統校の重責「誹謗中傷はかなりありました」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/07 06:00
2016年、箱根駅伝予選会で予選落ちし、報告会で下を向く選手たち。1年で副将を務めた田母神一喜に当時の話を聞いた
中距離に注力する一方、駅伝チームは箱根駅伝11位
2年生になると、田母神を取り巻く環境にも変化が現れる。副将のポジションは上級生に譲り、希望通り、中距離の練習に特化していく。10月には一人寮を出て、スポーツメーカーのナイキが立ち上げたプロチームで活動することになった。陸上部の長距離ブロックに籍を置きながら、外部コーチである横田真人(800mの元日本記録保持者)に師事する。これもまた異例の取り組みだった。
「僕もナイキのスポンサードを受けていたので、特別に練習生として受け入れてもらったんです。藤原監督にも良いよと言ってもらえて、活動費とかもチームの部費から出してもらえた。本当に恵まれた環境でやらせてもらって、監督や大学には感謝の思いしかないですね」
振り返れば、あの予選会がチームとしての底だった。中大は翌年に本戦返り咲き。さらに次の年には箱根駅伝で11位と、シード権まであと一歩のところまで迫った。
監督からの呼び出し「チームに戻ってきてくれないか」
田母神も個人で奮闘し、3年時の日本選手権1500mでは有力な社会人選手を抑えて3位に入っている。アジア選手権の日本代表にも選ばれ、東京オリンピック出場も視野に入るかという活躍ぶりだった。
この時、彼は大きな岐路に立つ。藤原監督やコーチに呼び出され、こう切り出されたのだ。「チームに戻ってきてくれないか」と。
<つづく>