箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「お前らは中大の恥だ」という電話も…箱根駅伝の名門“まさかの予選落ち”、1年生主将&副主将が直面した伝統校の重責「誹謗中傷はかなりありました」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/07 06:00
2016年、箱根駅伝予選会で予選落ちし、報告会で下を向く選手たち。1年で副将を務めた田母神一喜に当時の話を聞いた
「いま思えば、僕たちが調子に乗っていたんですけど、あの時は僕と舟津がけっこうイケイケで、それでああなってしまって。舟津は駅伝でも力があったし、頑張ってチームをまとめようとしていましたけど、やっぱり経験の差はありました」
報告会での「伝説のスピーチ」
10月の箱根駅伝予選会、そこで悲劇は起きた。
本戦出場が決まる10位までに校名が呼ばれず、中央大はよもやの11位。大正14年から続いてきた連続出場が87回で途切れてしまったのだ。直後の報告会、多くの関係者が見守るなか、矢面に立ったのが監督であり、1年生のキャプテンだった。
舟津はこう言って、チームを守ろうとした。
「自分たちはやれると思ってやってきました。それに対して、誰も文句は言えません。もし先輩方に何か言う人がいたら、自分が受けて立ちます。自分にすべてぶつけて下さい」
寮の留守電に「1年にやらせるからこうなるんだ」
立派な態度だったと思うが、それでも非難する人はたくさんいたという。
「それこそ僕たちへの誹謗中傷はかなりありました。SNSだったり、寮の留守番電話にもメッセージが入っていたりして。『お前らは中大の恥だ』とか、『1年生にキャプテンをやらせるからこうなるんだ』とか。あのスピーチをよく思わなかった方もいて、舟津はけっこうダメージを受けてましたね」
田母神はその時の予選会を走っていないが、会場に行って、中大の伝統をまざまざと感じたという。幟旗の数が他大学と比べても圧倒的に多く、注目度も桁違いだった。予選落ちして初めて、「自分たちはとんでもないことをしてしまったんだ」と感じ入った。
巻き込まれた嵐は、過ぎ去っていくのを静かに待っている他はなかった。