「結果的に新人王を獲れるところまでいきましたが、そもそも、新人王は目標でもなくて、頭の片隅にもありませんでした。岡田監督は勝負に厳しい方ですが、使っていただいて、人生の恩人です」

2007年の新人王に輝いた上園（左）。パ・リーグの新人王は田中将大だった　©︎JIJI PRESS

　上園は阪神を退団後、楽天に移籍し、NPBで15勝を挙げた後、海外でもプレーした。現役引退後も一貫して野球関係の業務に携わっている。

「変わらないこと」の凄み

　15年ぶりにタテジマのユニフォームに袖を通した岡田はかつて上園に施したように、今年もまた「自信の効用」で選手を引き上げた。大竹耕太郎がその一人である。昨季まで在籍したソフトバンクで2年間、白星がなかったが、ある配慮をしていた。

　大竹は今季を振り返るなか「実は今年、先発陣の中では甲子園の登板数がダントツで多いんです。監督は僕の球場との相性も考えて登板を決めてらっしゃいます。甲子園の方が合うっていうのも、分かってらっしゃると思います」と明かしている。

日本シリーズでも本拠地・甲子園での第5戦で先発した大竹　©︎Naoya Sanuki

　岡田が投手コーチとともに練り上げた先発ローテーションのなかで、大竹は相性がいい甲子園での登板が多くなるように配置されていた。今季、甲子園でチーム最多の12試合に先発して、5勝1敗、防御率2・28だった。ここでは打者と向き合った時、18・44mが近く感じるという。感覚的なものだが、その分、球もコントロールしやすい。技巧派投手にとって広い球場は安心感もある。勝ち星を積み上げ、11月の日本シリーズ第5戦も甲子園で先発して好投した。

　18年前からの「変わらないこと」の凄みが際立つ1年間になった。来季は、高卒2年目の19歳左腕でブレイクの予感漂う門別啓人の抜てきが濃厚だ。名伯楽がどのように育てるのか楽しみは尽きない。