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「自分の責任」「きつかった」今季60戦目の浦和レッズは限界を超えていた…TV中継なきクラブW杯4位、25年“新装大会”でのJリーグへの要望
posted2023/12/24 11:09
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Kyodo News
チームの広報に付き添われ、遅れてミックスゾーンにやってきた伊藤敦樹は、目を真っ赤に腫らしていた。
無理もない。前半25分に喫した2失点目の要因は、自陣ゴール前で彼がボールを奪われたことにある。一方で後半9分のPKによる同点ゴールは、彼のクロスをブライアン・リンセンが頭で合わせて相手のハンドを誘ったものだが、そんな事実はなんの慰めにもならないようだ。
「今日は勝てた試合だったと思いますし……自分の責任だと思っています」
荻原「この大会で自分がチームに残せたものは…」
同じくミックスゾーンで憔悴した様子を見せた荻原拓也は、試合の感想を求められてもすぐに返答できなかった。
後半20分からピッチに立ったが、後半27分にホールディングの反則を取られてPKの判定が下される。GK西川周作の好セーブによって失点は免れたものの、チームの反撃に貢献できなかった。
しばらく考え込んだ荻原は、なんとか言葉を絞り出した。
「クラブの方、チームメイト、監督、コーチングスタッフに感謝の気持ちでいっぱいです。この大会で自分がチームに残せたものは多くなかったと思います」
だが、彼らを責めることはできない。
11月12日のヴィッセル神戸戦で負傷退場した伊藤が実戦に復帰したのは、12月3日の北海道コンサドーレ札幌戦のこと。サウジアラビア入りしてからも「まだプレー中にかばってしまうことがある。コンディションももっと上げていかないと」と、万全の状態ではないことを明かしていた。
満身創痍の荻原もマンチェスター・シティとの準決勝後に取材対応を終えると、負傷箇所の痛みがぶり返したのか、車椅子に乗ってチームバスへと向かったほどだった。
今季公式戦60試合目、選手たちは限界を超えていた
限界だったのは、ふたりだけではない。
11月6日に手術を受けて全治3カ月と診断されながら今大会に参加し、アル・アハリ戦で先発したキャプテンの酒井宏樹は、本調子からは程遠い出来で、最後まで持たなかった。フル出場を果たした安居海渡は、今にもミックスゾーンに座り込んでしまいそうな様子で「きつかった」「疲れた」と繰り返していた。
この試合が浦和レッズにとっては今季の公式戦60試合目。選手たちはとっくに限界を超えていたのだ。