「マンツーマンは思っている以上に複雑なものだ。マンツーマンと表現すると、自分のマークする相手だけを見ればいいと考えがちだが、そうではない。守らなければいけないのは常に自軍のゴールであって、そのゴールを意識しつつボールに対する守備を考えなければいけない。ボールがどこにあるのか、ゴールがどこにあるのかを基準としながら、自分のマークだけではなく味方をカバーすることも考え、常に予測してポジションを取る。そうでなければ効果的ではなくなってしまう。それを瞬時に連続性を持って行うことがいかに複雑か、お分かりいただけるだろうか。ただ、この複雑なタスクをやり切れば、効率よくボールを奪って攻めに転じられるのだ」

　マンツーマンをオールコートで行えば、当然、相当な運動量と持久力が必要になる。一見、無謀とも思えるが、そこには日本が世界を制するためのヒントがあるかもしれない。オリンピックの100メートルで日本人が金メダルを取ったことはないが、マラソンではすでにいくつも輝くメダルを手にしているのだ。実際、2つのドイツ戦の後半は、相手の足が止まる中、日本の選手たちが躍動した。　

「ベスト8以上の結果を手にできる」

　2時間弱のロングインタビュー。その最後の質問。着実に歩を進める現在の日本代表は、ミシャの目にどう映っているのか、聞いた。

「代表チームの年齢を見ると、次のワールドカップには経験を積んだ選手たちが非常にいいタイミングで臨むことになる。その意味で私は十分にベスト8以上の結果を手にできると思う。ポイチさんは非常に良いセレクションをしているし、すでに長く共にプレーしている選手がたくさんいる。意思疎通、戦い方の統一もできている中で、多くの選手が20代中盤から後半になって迎える次のワールドカップは非常に楽しみだ。そこに新たな選手も加わってくるはずで、次のワールドカップは大きく期待していいと思う」

　日本代表の成功は、日本サッカーの未来を明るく照らす。答えを言い切った後、ミシャはもうひと言だけと言って付け加えた。

「先ほど、カタール大会前の予想の話をしたでしょう。私の予想はよく当たる」

（全3回・完）

◇「J2に落ちても構わない」前代未聞のオファーを受けて札幌にやってきたミシャ監督。少年時代のルーツやJリーグでの18年間を振り返るロングインタビューを第1回から読む。

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「J2に落ちても構わない」前代未聞のオファーはなぜ生まれた？ ミシャが語る“クレイジーな攻撃サッカー”の歴史〈広島6年→浦和6年→札幌6年〉