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「大谷翔平のエンゼルス入団よりも…」“Jを最も知る外国人監督”ミシャ66歳、日本サッカーへ愛の警鐘「ポイチさんには期待している」
posted2023/12/01 11:05
text by
佐藤景Kei Sato
photograph by
Kei Sato
Jリーグ創設30周年というメモリアルイヤーは、今週末に終わる。その歴史の半分以上、実に18年にわたり、監督としてリーグに携わってきたミシャこと、ミハイロ・ペトロヴィッチにその発展と変化について聞いた。ヨーロッパのサッカーを知り、日本のサッカーもよく知る指揮官は、言わば外側と内側の視点を持つ。これほどJリーグを語るにふさわしい人物もいないかもしれない。
「私が日本に来た18年前と比べれば、さまざまな点で違いを感じる。ほとんど全てと言っていいかもしれない。まずピッチ内のわかりやすいところで言えば選手の運動量が圧倒的に増えた。球際の激しさも増し、戦術面にも発展が見られる。その結果、スペースはより狭くなり、素早い判断を求められるようになった。今では11人でプレーするには少しピッチが狭いと感じるほどだ。つまりサッカーそのものが変わってきた。世界的な流れの中にJリーグもある。
日本人選手のクオリティーも飛躍的に向上した。今、海外でプレーする日本人は大勢いるが、ひと昔前と所属するクラブやリーグが変わっていることに気づくはずだ。誰もが知る世界のトップリーグやクラブでプレーしている選手が格段に増えた。彼らはほとんどがJリーグで育った選手たちで、その事実がJリーグのレベル向上を証明している」
ピッチ内における世界と日本の差は以前より小さくなり、選手も力をつけた。その指摘はおそらく正しい。ただし、それはピッチ内の話に限られる。競技面の進歩が目覚ましい一方で、日本におけるサッカーの扱いは「まだまだ小さい」とミシャは言う。
「30歳でリバプール移籍」は衝撃的なニュース
「海外で活躍する選手が増え、日本代表チームが強豪国に勝つなど結果を出している影響で、日本においてサッカーはより大きな興味の対象になった。しかし、それはあくまで以前に比べての話であって、もっと大きな存在になれるとも感じる。この夏、遠藤航がリバプールという世界的なビッグクラブに加入した。あの、リバプールだ。野球の大谷翔平選手がエンゼルスに入団したときよりも、衝撃的なニュースではないか。もちろん、メディアも遠藤のリバプール入りを報じていたが、大谷選手の日々の報道に比べれば圧倒的に情報量が少ない。もっともっと遠藤や、三笘薫でもいいが、報じられて然るべきだ。それによってサッカーに対する興味ももっともっと広がっていくはずだ」
浦和時代に指導した遠藤航が30歳にしてリバプールに加入したことは、ミシャにとって大きな驚きであり、喜びだった。だが同時に、多くの日本人にその価値が理解されていないと感じることにもなった。あまりに報道が少ないからだ。