セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「カマダは…好きなタイプだ。だが」サッリ親分“鎌田大地サブ続きのワケ”に思い出す中村俊輔、小笠原満男の“イタリアサッカー観との違い”
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byIvan Romano/Getty Images
posted2023/11/30 20:11
鎌田大地はチャンピオンズリーグ、セリエAとベンチスタートの機会が増えている
昨季まで理想としてきた機動サッカーをあきらめ、ある程度の現実路線にシフトした結果、10月には難敵のアタランタ、サッスオーロ、フィオレンティーナ相手に3連勝。鎌田の出場時間減少と反比例するように、ラツィオはしぶとく勝ち点を積み重ね、一時は欧州カップ出場圏も視界に捉えた。
ただし、一旦リードを許すと今季のラツィオには反撃する胆力がない。2年かけて築き上げてきた戦術サッカーの強豪ラツィオのイメージが脆くも崩れつつある。
鎌田が先発した一戦でラツィオが露呈した問題とは
サレルニターナ戦で先発したMFカタルディも困惑の表情で振り返った。
「チームに何が起きているかわからない。自分たちのパフォーマンスがベストではなかったかもしれない。難しい試合だったけれど先制はした。そして後半の入り方で間違えてやられた」
チームの今季の最大目標はセリエAを4位以上で終え、来季CL出場権を獲得することだが今のままではとても覚束ない。未だ勝ち方があやふやなままだから、アウェーで完全に受け身になってしまう。
L・アルベルトが欠場し、鎌田がフル出場したサレルニターナ戦は、指揮官曰く「昨季までのラツィオなら楽に勝てていたゲーム」だった。最下位クラブ相手の惨敗は“未完成の中盤”という今季のチームが根本に抱える問題をあらためて露呈した。
現状の鎌田を見て思い出す、俊輔や小笠原のつぶやき
現状の鎌田を見ていると、今世紀初頭にセリエAに渡ってきた日本人選手たちのつぶやきを思い出す。
南イタリアの田舎クラブに来て1年目、それまでとまったく異なる環境に放り込まれたMF中村俊輔(当時レッジーナ)やMF小笠原満男(同メッシーナ)は、それぞれ「周囲とサッカー観が合わない」という趣旨の言葉をこぼしていた。母国語メディアに本音を漏らすのは、どこの国の選手でもよくあることだ。
2人の待遇や契約条件が異なっていたにせよ、クラブの経営状況や監督交代という混乱の中で、俊輔は不満をバネに技術を研ぎ澄ましながら己の立ち位置を確保した。一方で、小笠原は何事か達観したように1年限りで日本へ戻っていった。