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森保ジャパン守田英正28歳“日本に伝わらない”ポルトガルで認められた勲章…敗戦で目は充血も「5万人の敵地ダービー大ブーイング」
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/11/19 17:03
日本代表の中盤の主力である守田英正は、ポルトガルの名門スポルティングでも重要な役割を果たしている
後半開始早々の51分、3センターバックの一角ゴンサロ・イナシオが2枚目の警告を受け退場。数的優位に立ったベンフィカが同点目指し攻勢を強めた。それでもベンフィカはゴールを奪えずにいた。
そしてスポルティングもまた、ワントップ、先制点のギョケレスが身体を張りなんとかボールをキープ。シュートチャンスを作り出したが決め切ることができずにいた。また守田も負傷明けにも関わらず、攻守にわたって奮闘する姿が目立っていた。しかし85分、守田が倒れ込んでしまい、そのまま医療スタッフと共にピッチを後にした。その際には今後への懸念が頭をもたげたが……。
アディショナルタイムに入った94分、冒頭に記した通りディマリアのCKのこぼれ球をフリーで待ち構えるネビスが落ち着いて蹴り込み同点とした。会場は沸き立ち、またスポルティングイレブン、ベンチは言葉を失い、うなだれるしかなかった。
勢いに乗ったベンフィカは97分、ディマリアがサイドに展開、グラウンダーのクロスが蹴り込まれた。飛び込む3人のベンフィカに対して、スポルティングの出足は鈍ってしまっていた。途中出場カスパー・テングシュテットがネットを揺らした。
ゴールはそのまま認められず、VARによってしばしチェックの時間を要した。終了間際のVARによって認められたゴールは、そのままベンフィカの勝利を告げるに等しかった。
目の前には歓喜と悲哀が色濃く広がった。
ブーイングは敵地が守田を認めた証拠だった
試合後のピッチでは、エキサイトした両陣営が入り混じっての乱戦も繰り広げられた。また悲劇の逆転劇をベンチから見つめることになった守田が挨拶のためにピッチへ戻った時、やや赤みがかったその視界は滲んでいたのではないか。
勝負を決する2点目を奪えなかったこと、自分がマークしていた相手に奪われた同点ゴール。負傷により90分を戦い抜くコンディションではなかった、それでもあと数分、自分がピッチにいることができていれば――。
同点から逆転までの数分をベンチから見つめるしかできなかったこと。
敗戦を守田の責とするものなどいない。ただチームの中心としての自負が、この敗戦を悔やんでも悔やみ切れないものにしていた。
敵地でのダービーにおいて、守田は一番ブーイングを受けた選手だった様に感じた。
激しく相手を潰すプレーに対してだけでなく、中盤で囲む相手を華麗にかわして、また簡単にボールを受け渡してリズムを作り出し受けるブーイングは、約5万人の観衆が詰めかけたスタジアムが守田を脅威だと認めた証拠だった。
この勝敗により、首位が入れ替わった。
負傷の影響も懸念された守田だが、そんな一戦での悔しさを抱えてワールドカップ予選を戦う日本代表へ合流。故障者が増えている中盤の構成において大事な役割を務める。
欧州での過密日程、日本への長距離移動に対し「それが代表ってもんだと思う」と日本代表として戦う重みと覚悟を明言し、ミャンマー戦でも途中出場して堂安律のゴールをアシストした。シリア戦、その後のスポルティングで存在感を示す戦いは続く。