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日本シリーズウラ話…ノイジー「バースの再来」値千金の3ランの陰にあった岡田監督の“ある一言”「あれで気持ちが楽になったんだ」《阪神残留決定》
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/11/17 17:03
日本シリーズ第7戦で値千金の3ランを放ったノイジー。来季のチーム残留も決定的となっている
電光石火とはまさにこのこと。意表を突かれた相手バッテリーの考えがまとまらないうちにチャンスを拡げた。流れるような攻撃で難敵の山本を攻め落とし、一挙4点を先制した。
外国人選手もまた、岡田野球を忠実に体現する。貪欲に1つでも先の塁を狙っていく今年の強さの一端が垣間見えた。だが、ノイジーは、あのシーンについて聞かれると、やはり厳かな表情を崩さぬまま、こともなげに言った。
「子供の時から、ずっとそういう意識でやっているんだ。それがやるべきことだと思うからね。ノーアウトランナー二塁の時は右方向に打つことがね。たとえば、ランナーが一塁にいて、内野守備でゴロが飛んできたらゲッツーを狙うだろ。それと同じで、当たり前のことだからね」
メジャーリーグではアスレチックスとドジャースで147試合に出場した経験を持つ。
来日前からの巧打者の触れこみ通り、シーズン中も状況に応じて右打ちを見せ、しぶい働きを見せた。あのライトへのフライも記録では「右飛」としか残らない。試合後も、まともに取材されなかった。だが、2発に匹敵する、価値のある凡打になった。
シーズン終盤には裏方にプレゼントも…
気難しい表情だからといって、心も険しいわけではない。ノイジーにも粋なところがある。
シーズン終盤、体のケアをしてくれた球団のトレーナーたちにジャケットをプレゼントしていた。きめ細かく採寸するこだわりのオーダーメイドで、日々を支えてくれたスタッフへの感謝を込めた。
「終盤になるにつれて、自分の中で自信が出てきた。最後まで全力を出し切るなかで、自分のプレーをできた。一緒に戦ったチームメートのおかげだよ。この一員になれたことをうれしく思う」
日本一の瞬間、ウイニングボールを捕ったのは左翼を守るノイジーだった。岡田にすぐに渡さなかった記念球だったが、実は本当に欲しかったのだという。右打ちと強肩の「いぶし銀」がしぶく光る助っ人にとっても、それほど渇望していた勝利だった。