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日本シリーズウラ話…ノイジー「バースの再来」値千金の3ランの陰にあった岡田監督の“ある一言”「あれで気持ちが楽になったんだ」《阪神残留決定》
posted2023/11/17 17:03
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Kiichi Matsumoto
日本シリーズ第7戦が中盤に差し掛かった頃、京セラドーム大阪で阪神とオリックスの最終決戦を見ていると、球界関係者から電話が掛かってきた。
「これ、MVP、ノイジーじゃない? この展開で3ランだろ。間違いないよね」
試合前、第2戦で快投した宮城大弥が登板するオリックスが有利とみる予想が多かった。だが、勝てば日本一の大一番は想定外の展開になった。阪神ナインが若き左腕に襲いかかり、ワンサイドゲームになりつつあった。その流れを引き寄せたのが、シェルドン・ノイジーである。
両チーム無得点の4回1死一、二塁。1-2からの4球目、見逃せばボール球の低めチェンジアップをすくうと、左翼席に運んだ。誰もがあっけにとられる弾道だった。
監督の岡田彰布は試合前、打撃ケージ裏にやってきた評論家たちに言っていた。
「今日は2点取れるように頑張らな。2点取って、その点を守り切る展開になるかな」
そんな見通しのはるか上をいく、ノイジーの先制3ランである。阪神ナインにとって、一気に気勢が上がる一撃になった。
「あの」ランディ・バース以来となるホームラン
ノイジーは前夜の第6戦でも、山本由伸の156kmを打ち砕いて、右翼にソロアーチを架けていた。阪神の日本シリーズでの本塁打は2003年第7戦の広澤克実以来、20年ぶり。球団の外国人選手では、85年のランディ・バース以来となる一発だった。この日で2試合連続本塁打。第7戦の土壇場で、MVP候補として急浮上した。
「今年1年、このためにプレーしてきたからね。1年間、しっかり準備して、最後にチームに貢献できた」
結局、1番の近本光司がノイジーの先制アーチを尻目に4安打を重ね、日本シリーズ打率.483でMVPを獲得した。ノイジーの“戴冠”は幻となったが、優秀選手賞に選ばれ、奮闘ぶりがたたえられた。
岡田は正直である。85年以来、38年ぶりの日本一に導いた監督インタビューでお立ち台に上ると、本音を明かして笑わせた。
「あそこでホームランが出ると思ってなかった。宮城投手、こないだも0点だった。本当に千金の3ランホームランやったですね」