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日本シリーズウラ話…ノイジー「バースの再来」値千金の3ランの陰にあった岡田監督の“ある一言”「あれで気持ちが楽になったんだ」《阪神残留決定》
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/11/17 17:03
日本シリーズ第7戦で値千金の3ランを放ったノイジー。来季のチーム残留も決定的となっている
公式戦は133試合に出場して打率.240、9本塁打、56打点にとどまり、強打が求められる外国人外野手としては物足りなかった。だが、大勝負の日本シリーズで鮮やかな変わり身だ。
長い間、伝説であり続けた「ランディ・バース」を過去から引っ張り出してくるのだから、なかなかの勝負強さである。しかも、来季の残留まで勝ち取った。
バースとノイジーの“共通点”と岡田監督の献身
バースとノイジー。2人の共通点はまだある。
ノイジーは「修行僧」のようなキャラクターである。ヨハン・ミエセスが最初は人見知りでありながらも次第にナインに溶け込み、その陽気さでムードメーカーになったのに対して、ノイジーはいつも物静かだった。快打を放ってもはしゃがず、凡打した自分に腹を立てて悔しがる。孤高で完璧主義者の一面があった。岡田もそんな性格を見抜いていたのだろう。ある時、難しい顔をしているノイジーに声を掛けた。
「ストレスを感じすぎるな。楽しんで、リラックスしてやればいい」
言語もしきたりも異なり、右も左も分からない海外で、もっともホッとするのは親切な人の存在である。岡田は現役時代から外国人選手の面倒見がよかった。英語が堪能な陽子夫人の存在も大きく、バース一家を支えたのは有名な話だ。
ノイジーもまた、アメリカから来日1年目で、慣れない異国で野球人生を懸ける。岡田は、かつて、バースを陰でサポートしたように、ノイジーに対しても荷を軽くした。だから、彼にとって、この1年間で最も心にしみた言葉になった。
「監督のあの言葉で、すごく自分の中で気持ちが楽になったんだ。攻撃面ではなかなか貢献できていないと自分でも感じている。そんななかでも多くの試合に出させてもらい、信頼してもらえていると感じたよ」
武骨な生き方は、第1戦のライトフライに滲み出ていた。山本に苦戦し、無得点で5回を迎えた。先頭の佐藤輝明が中前打で出塁して初球スチールに成功する。奇襲である。岡田はすかさずノイジーに進塁打のサインを出すと、ボールを1球見逃した直後、あうんの呼吸で飛球を右翼へ。佐藤輝のタッチアップで1死三塁の絶好機を築いた。