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優勝目前で阪神フロントがまさかの「勝ってくれるな」発言…甲子園でファン3000人“暴徒化”、巨人ベンチ襲撃事件「阪神ファンのトラウマが始まった日」 

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近藤正高

近藤正高Masataka Kondo

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posted2023/11/04 17:43

優勝目前で阪神フロントがまさかの「勝ってくれるな」発言…甲子園でファン3000人“暴徒化”、巨人ベンチ襲撃事件「阪神ファンのトラウマが始まった日」<Number Web> photograph by KYODO

1973年に史上初の延長戦ノーヒットノーランを達成。当時、阪神のエースだった江夏豊

 当時の巨人の川上哲治監督は、阪神・中日の試合の趨勢が見えたころに名古屋を通るということで、この列車を選んだという。名古屋駅に到着する頃、阪神が負けたとの情報が車内に流れ、優勝の可能性を残した巨人の選手たちから歓声が上がった。

 雨天のため22日に順延となった甲子園での最終戦で、阪神は巨人に0対9で完敗を喫した。阪神ファンの怒りは収まらず、巨人のV9が決まった瞬間、グラウンドに3000人もの群衆がなだれ込み、両チームの選手はベンチ裏に逃げ込んだ。まったくの余談だが、日米通算4367安打を達成したイチローが誕生したのはちょうどこの日である。

星野仙一「阪神は気迫がない」

 10月20日の中日戦で阪神を相手に完投したのは星野仙一だった。星野は現役引退後の著書のなかで、この試合では《中日ナイン全員が、「阪神さん、勝ってもいいよ」という気分だった》のが、途中から変わったとして、次のように記している。

《阪神ベンチから、「優勝をかちとろう」という気迫がまるで感じられないのだ。「なんとか勝たせて!」という神頼みしか伝わって来ない。[引用者注:中日の二塁手の]高木守道さんが寄って来て、こう囁いた。/「こんなチーム勝たすことないぜ。早く勝って、あしたゴルフにでも行こうよ」/僕は大きくうなずいて、それから全力投球。これが「巨人V9の真相」というべきものだ》(『星野仙一の巨人軍(ジャイアンツ)と面白く戦う本』文藝春秋、1983年)

 このときの星野は、まさかその30年後、自分が阪神の監督としてチームを叩き直し、優勝に導くことになろうとは夢にも思わなかっただろう。

阪神”伝統のお家騒動”

 1973年のシーズンを通して阪神はチームとしてバラバラの状態であったという。監督の金田正泰は、江夏豊との確執がファンにも知られ、ほかの選手からも口の悪いのが災いして殴打されるという事件もシーズン中起きていた。それに加えて、のちに江夏が証言したように、フロントは優勝を望んではいなかった。阪神があと一歩というところで優勝を逃したのには、そうした球団内部の事情もあきらかに影響していた。

【次ページ】 阪神”伝統のお家騒動”

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