球体とリズムBACK NUMBER
“20歳マドリー新怪物”鳥肌ゴラッソでバルサ粉砕「父に“正しいことをするんだ”と」久保建英や大谷翔平と似た規格外…ベリンガムの育ち方
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph bySoccrates Images/Getty Images
posted2023/10/31 17:26
マドリーのエンブレムを誇示するベリンガム。宿敵バルサを絶望の淵に追いやった20歳の才能は計り知れない
63分に投入されて流れを変えた38歳のルカ・モドリッチ──彼が引き際を誤っていると批判する人もいるが、的外れな意見だと思う──が、ボックス内で右のダニエル・カルバハルからのクロスに触れて球がバウンドすると、いち早く反応したベリンガムがGKの前で押し込み、マドリーに勝点3をもたらしたのだ。
「おそらく今日の僕の出来は、ベストじゃなかったよね」とベリンガムは試合後に言った。確かに序盤からバルセロナが先制して、その後も多くの時間でホームチームが試合を優位に進めていたなか、彼も本来の力を発揮するまでに時間を要した。大人びた口ぶりと表情で、彼は自身初のエル・クラシコを振り返っていく。
「なんとか踏ん張らないといけないと思っていた。時にはボールを受けても、何か特別なことをしようとしなくていいし、アタッカーに渡して彼らに仕事をしてもらうこともある。ただきっと、その瞬間が来ることもわかっていた。ボールが来たら、僕が得点する時が訪れると」
ナンバー10にして10試合10ゴールの固め打ち
そんな発言が傲慢に聞こえないのは、ここまでに信じがたい結果を残しているからだ。
ストライカーではなく、主にナンバー10としてプレーしている選手が(このバルセロナ戦では左MFとも表記できそうな位置を取っていた)、初挑戦のラ・リーガで開幕から4試合連続で5得点を挙げ、チャンピオンズリーグでも3試合で1得点ずつ記録している。
そしてエル・クラシコで2ゴールを決め、リーグ戦では10試合10得点でスコアチャートの首位を維持しつつ、マドリーの選手としてラ・リーガとチャンピオンズリーグ、そしてエル・クラシコのすべてのデビュー戦でネットを揺らした初めての選手となった。
憧れはジダンだが、比較対象はカカでは
ラ・リーガで10得点──その数字はベリンガムの憧れであり、彼が今まとっている背番号5をつけていたレジェンド、ジネディーヌ・ジダンがこのクラブで1シーズンに記録した最多得点数をすでに超越したことを意味する。
「僕がどれだけジネディーヌ・ジダンに憧れてきたかについては、ずっと語ってきたよね」と入団会見で、ベリンガムは5番を譲ってくれたヘスス・バレホに感謝したうえで、そう話した。「でも彼と同じようになろうとしたことはなくて、僕はいつもジュードであろうとしてきたんだ」
比較対象としては、20年前にアンチェロッティ監督がACミランに呼び寄せたカカのほうが適している気がする。