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“20歳マドリー新怪物”鳥肌ゴラッソでバルサ粉砕「父に“正しいことをするんだ”と」久保建英や大谷翔平と似た規格外…ベリンガムの育ち方
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph bySoccrates Images/Getty Images
posted2023/10/31 17:26
マドリーのエンブレムを誇示するベリンガム。宿敵バルサを絶望の淵に追いやった20歳の才能は計り知れない
当時21歳だったブラジル代表MFを、このイタリア人指揮官は前線のひとつ後ろに配し、フォワードに劣らないほどのスコアラーへと成長させた。カカはデビューシーズンにセリエAを制し、翌シーズンの“イスタンブールの奇跡”による屈辱を経て、2007年にはチャンピオンズリーグのタイトルとバロンドールを獲得している。起用法やチーム作りからして、おそらくアンチェロッティ監督は、この2人を重ね合わせているのだろう。
“久保や大谷と共通する育ち方”って?
真のスーパーアスリートを常識で測れないことはわかっている。年齢とか、重圧への対処法とか、彼ら自身は考えたことさえないのかもしれない。ただベリンガムやカカ、それから久保建英や大谷翔平らに共通することがあるとすれば、彼らをまっすぐに育てた親の存在ではないだろうか。
ベリンガムは3年前にバーミンガム・シティからボルシア・ドルトムントへ移籍した時、「あなたの仕事への献身性はお父さんから受け継いだものですか?」と訊かれて、次のように答えている。
「そうだと思う。父は何かをする時、どんなことでもまっとうにやるんだ。彼は自分の仕事に誇りを持っていたし、物事を片手間で済ませるようなことは一切なかった。僕に何かを強要することもなく、いつも『自分が正しいと思うことをするんだ』と言ってくれたよ」
ポジティブなワーキングクラスの両親を心から尊敬しているベリンガムは、少年時代から「素晴らしい人間性を持っていた(Wonderful human being)」と、バーミンガムのアカデミー・マネジャーは明かしている。そして父のマークがこの長男に授けたもののなかには、世界でもっとも広く愛されている楽曲名のひとつもある。
ビートルズと『Hey Jude』は大好きさ
最近、マドリーとイングランド代表のホームゲームでは、ビートルズの『Hey Jude』が合唱されている。もちろん、この新たなヒーローを称えるために。
「ビートルズは大好きだ」とジュードは話した。
「とても多くの良い歌があるけれど、僕が特に好きなのは、わかるよね。得点したり、タックルしたり、スキルを見せたりすると、あの曲が聞こえてきて、少しずつ大きくなっていくんだ。鳥肌が立つよ。本当に誇らしいことさ」
この先、少なくとも10年は、『Hey Jude』がフットボールのスタジアムでヘビーローテーションされそうだ。