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バロンドール受賞者はメッシ…最高機密が漏れた真相と、選考基準通りなら本命のエムバペが受賞を逃した理由とは
posted2023/10/30 11:06
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
バロンドールは世界で最も由緒あるサッカーの個人表彰である。ヨーロッパで権威を持つサッカー雑誌であるフランスフットボール誌(以下FF誌)が主催し、67回目を数える今年(2022−23シーズン)の受賞者は、10月30日に発表される。授賞式典はパリのシャトレ劇場でおこなわれ、その模様はレキップTVでライブ放映される。
30人からなる候補者のうち本命は、アルゼンチン代表で悲願のワールドカップ優勝を果たしたリオネル・メッシである。受賞すれば自身の持つ最多受賞記録を8回に更新することになるが、そのメッシの受賞は事前に一部メディアで伝えられたのだった。
過去にも類似の例はあった。FIFAバロンドールの最後の年であった2015年(2010∼2015年の6年間、FIFAがFF誌とバロンドールを共催し、FIFAバロンドールとしてバロンドールとFIFA年間最優秀選手賞を一本化した)、うっかりミスでサイトに受賞者名(メッシ)を掲載し、即座に削除したものの、受賞を逃したことを知ったクリスティアーノ・ロナウドが式典をボイコットする事件が起こった。また2016年、17年は、FF誌編集部員がSNSで受賞者の名前を漏らし、2018年は授賞式が始まる数時間前に、受賞者のみならず全体の順位がSNSにアップされたのだった。
本当にメッシなのか?
どれもインターネット時代の出来事である。それ以前、電話とFAXのみで投票のやりとりをしていた時代には、ここまでの漏洩はなかった。例えば1990年代、ガゼッタ・デロ・スポルト紙(イタリア最大のスポーツ新聞)は、毎年、秋になると記者をパリに送り込んでいた。FF誌編集部の周辺を探らせて、バロンドール受賞者を特定するためだったが、成功したのは筆者(田村)がうっかり結果を漏らした1度だけだった。
アナログの時代はオープンで牧歌的だった。編集部を訪れると、担当の記者が自らのデスクで得票を集計している。受賞者インタビューを担当するであろう別の記者に、「(レアル・マドリーに所属していたロナウドやジネディーヌ・ジダンらの受賞者インタビューのために)君はいつマドリードに行くのか?」などと尋ねると、ニヤッと笑って「インタビュー原稿が欲しいのか?」と逆に聞き返される。「発表直後に日本でも掲載したい。編集部には私から話をつける」と言えば、すべてはスムーズに進んだのだった。