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“20歳マドリー新怪物”鳥肌ゴラッソでバルサ粉砕「父に“正しいことをするんだ”と」久保建英や大谷翔平と似た規格外…ベリンガムの育ち方
posted2023/10/31 17:26
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Soccrates Images/Getty Images
百戦錬磨の指揮官をも唸らせる凄まじいパフォーマンスだった。
「今日の彼は極めて素晴らしく、途方もないゴールですべての人々に衝撃を与えた」
レアル・マドリーのカルロ・アンチェロッティ監督は、先週末のエル・クラシコで自らのチームに2-1の逆転勝利をもたらしたジュード・ベリンガムについて、試合後にそう語った。
クラシコでのショッキングすぎる無回転ミドル
それは文字通り、ショッキングな一撃だった。
加入1年目の20歳のイングランド代表MFが迎えた、バルセロナとの初めてのリーグ戦。改修工事中のカンプノウの代わりにモンジュイックの丘にあるスタジアムが使用されたとはいえ、そこはれっきとした敵地だ。しかもベリンガムは3日前のチャンピオンズリーグのブラガ戦で、終盤に負傷退場したと見る向きもあった。
だが周囲の心配をよそに、本人は「ちょっと捻っただけ」と明かして大一番に出場すると、ホームチームに1点をリードされていた68分に、その時を迎えた。
バルセロナのペナルティエリアからヘディングのクリアボールが中盤にこぼれると、ゴールまで約30メートルの位置でベリンガムが確保。すかさずボールを蹴りやすい位置へ置き、奪いに来た敵よりも早く強烈に右足を振り上げると、真芯に特大の力が伝わった無回転の弾道は、それまで見事なセーブを見せていたGKマルク・アンドレ・テアシュテゲンの右手をかすめてネットを突き刺した。
フットボールを映像で観ていて、鳥肌が立つことはたまにあるけれど、この瞬間に感じたほどの驚愕は滅多にないものだ。
今日の僕の出来は、ベストじゃなかったよね
舞台の重要度、当事者の年齢、そしてゴールの凄まじさを勘案すると、個人的には1998年W杯のラウンド16で当時18歳だったマイケル・オーウェンがアルゼンチンから奪った逆転ゴール以来と思えた。25年前のイングランドはその後、ハビエル・サネッティの得点で追いつかれ(FKからのトリッキーなこのゴールも印象深かった)、PK戦の末に敗れたが、現在のスリーライオンズのホープは幼少期から夢に見た一戦で、最後の最後に逆転ゴールまで奪ってみせた。