各球団の上位指名を予想したり、仲間が指名された直後のリアクションを楽しそうに相談したりと、彼らもドラフトという一大イベントを楽しんでいるようだった。3人の学生が最前列の席に移され、それぞれ「下村役・常廣役・中島役」としてカメラマンの“試し打ち”に協力する姿が微笑ましい。若者たちのまぶしさを目にして、「なんか、青学っぽいな……」という益体もない呟きが口から漏れてしまった。

社会人チームからの誘いを断っていた中島大輔

　16時30分。向かって左から下村、常廣、中島の並びで3人が着席した。緊張で唇が乾くのか、ポケットに忍ばせていたリップクリームを塗る下村を、常廣が笑いながら茶化している。まったくの部外者にも、彼らが大学で築いた関係の一端が窺い知れるような光景だった。

ドラフト会議開始前、会話を交わす下村海翔と常廣羽也斗　©Shigeki Yamamoto

「指名に至らなかった選手がいた場合は、その選手の会見対応はございません」

　メディア向けのアナウンスは淡々としたトーンだったが、それがなおさら「もし中島だけが指名漏れしたら」というネガティブな想像をかき立てる。しかし当の中島は、上位指名が確実な常廣や下村よりも明るく振る舞っているようにも見えた。安直な当て推量にすぎないが、これがチームをまとめてきたキャプテンの器なのかもしれない。すると隣席の「青山スポーツ」記者が、こんなことを教えてくれた。

「中島さんはすごく明るい人なんです。先日取材したときも、本当にいろんな話をしてくれました。完全に内輪ネタすぎて、記事に書けないようなことも含めて（笑）。何位になるかはわかりませんけど、絶対に指名されてほしいです」

青山学院大学野球部キャプテンの中島大輔。部員の誰もが指名を願っていた　©Shigeki Yamamoto

　かつてアントニオ猪木が言い放った「出る前に負けること考えるバカいるかよ」という言葉が頭のなかで再生される。中島が社会人チームからの誘いを断ってプロ一本に絞っていたのを知ったのは、ドラフト会議が終わった後のことだった。

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