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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「あぁ、指名漏れか…」ドラフトで“最も嫌われる言葉”から一転《西武6位指名》で叫び声…“史上初でドタバタ”村田怜音の指名ウラ側「ガリバーやん!」
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph byNumber Web
posted2023/10/29 11:02
西武からドラフト6位指名を受けた村田怜音(皇學館大)。写真は指名を待つ際の様子
次に指名される選手として、どのようなタイプがありえるかについて指摘した一言だった。
「村田のことじゃないか」
「まだあるぞ、指名あるぞ!」
19時2分、ついに訪れた歓喜の瞬間
だが次の指名球団である日本ハムから、ドラフト会議で「最も嫌われている」言葉が飛び出す。
「選択終了」
会場の感情がまるでジェットコースターのようにうごめく。つづくヤクルトも「選択終了」。このあたりで、あるハプニングが起きる。ドラフト特番を放送していたテレビの異変に、新田均部長と村田が気づく。
省エネ機能のためか、長時間つけられていたテレビが消えそうになっているようだ。
「これ、(画面が)消えちゃうよ」
「音量を上げたり、何かしら動かせば消えないはずです!」
そんな会話が聞こえた。……間もなく、19時2分のことだった。
「第6巡選択希望選手……埼玉西武……」
「村田……」
プロ志望届を出した「村田」は1人しか残されていない。つづけて呼ばれたであろう「怜音」の名は、連なる叫び声にかき消された。
この会議室(即席会見場)で未だかつて観測されたことはないであろう喝采が叫ばれる。
音圧か、はたまた実際に野球部員が飛び跳ねているからか。会場が震動する。拳を力強く握り、噛みしめるようにガッツポーズする村田。のち、顔をくしゃくしゃにしながら抱擁する村田、森本監督、新田部長の3人。
皇學館史上初、「プロ野球選手誕生」の瞬間だった。
「呼ばれるなら6位か7位」順位は計算どおりでも…
「信じられない。こんな事が起きるのかと……」。新田部長は言った。続けて問われた「プロ野球選手が生まれるかもしれないと思った瞬間は?」への答えが、その偉業を物語っていた。
「今日ここに来て、(メディアの)皆さんと会った時くらいですね。プレッシャーもあっただろうし、素質は誰もが認めていたが、指名は不安だった。信じられない気持ちです」
目標から逆算された大学生活の答えが出た。呼ばれるなら6位か7位。順位も村田の計算どおりだった。
ただ、あの興奮を見るに、達成された喜びまでは計算外だったのではないか。
最後、村田に聞いた。
「……反射です。考えてなかったです!」
史上初の22歳が破顔した。