その最たる例が、DeNA2位の松本凌人、ソフトバンク2位の岩井俊介への指名時だった。愛知の名城大出身という共通点がある2人に対する盛り上がりは、隣県ゆえの親近感からだろう。同じ野球部の仲間のように歓喜していた。

「やばいやばい、映ってる！」「ガリバーやん！」

　18時23分。西武が3位で杉山遥希を指名する。

「これで3人ピッチャーやろ……ええどー！」

　森本監督が人目を憚らずガッツポーズする。そう、ここまで西武の指名はすべて投手なのだ。

　18時30分頃から4位指名がはじまった。少しずつ、村田が語っていた“想定順位”に近づいていく。すでに1時間半が経過した。人前に座り続ける疲労からか、その顔は少し紅潮気味である。野球部員の声が聞こえる。「さぁ、ここからだぞ」。

　その数分後、地上波のドラフト特番で「村田怜音特集」が放送される。再び会場の興奮具合が増す。

「やばいやばい、映ってる！」

「ガリバーやん！」

　村田の目前には2台のテレビが並べられていて、1台はドラフト会議の生中継、もう1台は地上波のドラフト特番を放送していた。その間、一方ではこれから呼ばれるかもしれない会議、もう一方では自分が特集された映像が流れるという摩訶不思議な状況である。目の動きから察するに、「特番」を観る時間のほうが長かったように見える。まだ4巡目指名のためか。

自分が特集されている「ドラフト特番」が放送中 ©Number Web

ドラフト4巡目、まさかの“村田違い”が…

　事件は、その“2番組集中”の間に起きた。

「第4巡目選択希望選手……村田……」

　野球部員が立ち上がる。

「賢一」

　潮が引くように静まる歓声。ソフトバンクの4巡目指名は、もう一人の「村田」だった。

　この“村田指名”を境に、会場は動から静へ。森本監督と村田の会話シーンも減っていく。

　西武が5位で宮澤太成を指名した。5人中5人が投手のため、次が野手の指名になる可能性は十分にある。だが同時に、事前に想定していた「6～7位」が間近に迫っている。おのずと緊張感も上位指名時より増したように見える。水を飲む回数も増えた。

少しずつ下位指名に近づいていく ©Number Web

　18時58分、中日の6巡目指名。その直前にテレビ解説が放った発言に、不安感に覆われつつあった場が再び活気を取り戻す。

「長打力がほしいと思うんですけどねえ」

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