「あの1本が悪い流れを断ち切った。自分で言うのもおかしいですけど『チームを救った』『ナイス、俺』と思うぐらい（笑）。完璧なタイミング、会心の1本でした。あのまま一気に行かれたら1セット目を取れたかどうかわからない。自分の中でも、（大会の）序盤はコンディションもパフォーマンスも上がらなくてチームに迷惑をかけた分、一番大事なところでパフォーマンスを上げられるかが大事だと思っていたんです。だから、あそこでしっかりピークを持っていけたのはよかった。自分の中では想定通りでした」

　会心のブロックで引き寄せた流れを、完璧につかんだのがその直後だ。14対16と2点差に迫った第1セット中盤、セッターの関田誠大が「何とかしてくれる、という思いもあった」と託したトスを見事に決め切るなど連続得点をマーク。試合を動かす、皆が待ち望んでいた頼もしい姿を絶好の場面で見せつけた。

「MVPには健太郎さんを選びたい」

　五輪を決めたスロベニア戦だけを見れば、石川の活躍なくしてこの結果は成し得ない。だが、あえて大会を通しての“チームMVP”を決めるなら？　そう問いかけると「うーん」と数秒考えた後、石川が挙げたのはアンダーカテゴリーから共にプレーしてきたあの選手だった。

コートの外でもチームを支えた高橋健太郎（右）　©︎FIVB

「僕は（高橋）健太郎さんを推したい。プレーはもちろんですけど、セキさん（関田）のこともそばで支えてくれた。僕からセキさんに直接、何かを言うことはないんです。エジプト戦の後、健太郎さんがセキさんとたくさん話してくれたし、山内（晶大）さんが肩痛で出られなくなった時も健太郎さんが出てチームを助けてくれた。藍もずっとパフォーマンスがよかったけれど、僕はこの大会で藍が活躍するのは想定内でもあった。僕が決めていいのならば、MVPには健太郎さんを選びたいです」

　主将として9日間、7試合の激闘を「マジでよかった」と笑顔で振り返る。最大のターゲットとしてきたパリ五輪の出場権獲得はもちろん、確かな手ごたえも得られたからだ。

「ずっと（五輪出場の）切符を取ると言い続けてきた。しかも今までだったら僕が言って、そこにみんなもついてくる感じだったんですけど、今回はみんなもその気でいたし、口にして、全員がプレッシャーをかけてやってきた。だから、それが達成できて本当によかったです。途中から出た選手、（最後の）アメリカ戦に出た選手もみんないい経験になったと思うし、日本の選手層も非常に厚くなっています。またこれから、ですね」

セリエA開幕戦ではチーム最多の19得点を叩き出した　©️JIJI PRESS

　“失望”から“解放”へ。

　ようやく、五輪予選が終わった。パリ五輪は間もなく――すべて、ここからだ。