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「自分に失望した」衝撃発言から始まった“石川祐希の9日間” 今だから話せるエジプト戦の後悔と会心の1本「藍は想定内。MVPは健太郎さんに」
posted2023/10/26 11:02
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Yuki Suenaga
猛暑の夏を終え、暦は間もなく11月。日本国内はもちろん、世界各国でバレーボールのクラブシーズンが始まった。
つい先日まで開催されていた五輪予選が遠い過去のように感じられながらも、喉元に刺さる小骨のように、何か引っかかる。
ちゃんと書ききっただろうか。伝えきっただろうか。何か忘れていないだろうか。
そしてたどり着く。やはりこの人の話を聞かないと終わらないのではないか、と。
「失望」から始まった五輪予選を、彼はどんな感情で締めくくったのか。イタリア・ミラノで迎える4シーズン目の開幕前日、石川祐希に話を聞いた。
「ホッとしました。あー、今シーズンも無事終わった、って。解放されたという感じでしたね」
ミックスゾーンで漏らした“自分への失望”
9月30日、パリ五輪予選のフィンランドとの初戦。世界ランクや大会前の戦績から、大半の予想は日本が圧勝するだろうと目されていた。石川自身は大会前に「初戦から負ける可能性もある」と話していたが、2セットを難なく先取した時点では誰しもがストレート勝ちを想定して疑わなかった。
が、そこから日本の攻撃に対してフィンランドの守備がハマりだすと、第3、4セットを連取された。なんとかフルセットの末に辛勝を収めたものの、第5セットにサーブレシーブでミスが生じた石川は大塚達宣と交代した。
その試合直後のミックスゾーンだった。
「自分に失望しているんです」
苦笑いを浮かべていたが、“失望”というのはなかなかのパワーワードだった。なぜそこまで思いつめたのか。改めてたずねると、間髪入れずに石川が言った。