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まさかの戦力外続出、監督交代も…いまソフトバンクに何が起きているのか? “ナゾだらけ”の1週間に記者絶句「新チーム始動の日にどうして…」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/25 06:03
10月17日、退任会見を終えたソフトバンクの藤本博史監督
森は2020年から結んでいた4年契約が満了するタイミングだった。高年俸ということもあり、にわかに去就が注目されていた1人だった。
昨季「56試合で防御率0.99」嘉弥真も…
そんな森以上に筆者が驚きをもって受け止めたのが嘉弥真の退団だった。
2011年ドラフト5位、沖縄・石垣島出身の左腕はプロ5年目のオフにサイドスローに転向したのを契機に主にワンポイントとして中継ぎの柱に。昨年まで6年連続で50試合以上登板した。特に昨季は56試合で防御率0.99という成績。今季は23試合で防御率5.25と大きく成績を落としたことに間違いはないが、わずか1シーズンの不振でチームから去ることになるとは……。プロ野球が厳しい世界であることは承知の上だが、それでも驚かずにはいられなかった。
また、2013年ドラフト4位の上林は鷹ファンにとって希望の星だった。イチローにあこがれ背番号51を背負った左打者はすらりとした体格に似つかわしくない強烈な打球で見る者を魅了した。高卒2年目に一軍デビューするとプロ1号が逆転満塁ホームラン。20歳0か月での満塁本塁打は当時の球団史上最年少記録だった。4年目にはレギュラーに定着し、5年目には143試合フル出場し22本塁打を放つ活躍。侍ジャパンにも選ばれて“イチロー2世”は球団の枠を超えて羽ばたくものだと信じられていた。しかし、近年は故障が多く、昨シーズンには右アキレス腱断裂の大怪我を負った。今季は戦列に復帰し56試合に出場するも打率.185、0本塁打と振るわなかった。
一部メディアでは「大ナタを振るった」と表現されていた。それも納得の面々といえる。
ではなぜ、ソフトバンクは大決断を下したのか。
なぜ大ナタ? 深刻な“育成選手のモチベーション”問題
チームが本格的に変革期に突入するための代償ともいえるが、「枠」の問題があったことも一因だろう。ソフトバンクは球界唯一の四軍制を敷き、他球団に比べて多くの育成選手を抱えているにもかかわらず、支配下登録の空き枠があまりにも少なかったのだ。
今春キャンプインの時点で3桁背番号の選手を54名も抱えていたが、支配下登録選手は67名もおり、その時点で上限まで残り3枠しかなかった。そしてシーズン途中にデスパイネとヘルナンデスの外国人選手2名を補強。結局、54名もいた育成選手の中から支配下登録を勝ち取ったのはわずか1人だけだった。