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岡田彰布の「はっきり言うて」は本当に“はっきり言うてる”のか? 全62発言ガチ検証…「阪神ドラフト1位」に手厳しい“深すぎる”真意
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/31 11:00
岡田彰布の口癖「はっきり言うて」を分析してみた
「主力に成長」→厳しくなる
8月8日の巨人戦、8回に貴重な4号2ランを放つと「いやあ、もう1点差なってね。やっぱ大きかったですよ、はっきり言うて」と称賛した。この試合後も森下は殊勲打を連発し、3番・ライトを定位置とした。
しかし、優勝決定後の終盤に21打席連続ノーヒットなど不振に陥る。9月29日のDeNA戦後には「きょうのバッティングもあれやもんなあ。ストライクは1球も振らず、振ったらみんなボール。そんなんもうお前、お客さんに見せられへんよ。はっきりゆうて。あんな姿」と突き放した。
翌日の広島戦、代打で起用された森下はレフト前ヒットを放つ。試合後、岡田監督は「きっかけと言うにはまだ早いか」と聞かれ、「そら分からんわ、そら。そらお前、(CSクライマックスS初戦の)18日にちゃんと打ったらええんやから、はっきり言うて」と目先に捉われ過ぎて自分を見失わない大切さを説いた。
他の言葉からも、森下を主力と認めるにつれて厳しくなる様子が窺える。2月の練習試合で活躍すると「俺が入った時よりも数段上やな」と褒めていたが、9月8日に阪神の新人右打者では岡田彰布以来の2ケタ本塁打を記録すると「ああそうですか。いやいや、まだ8本差あるでしょ」と笑いを交えながらも冷静に語った。
見えた「はっきり言うて」の効用
人気球団・阪神のドラフト1位で活躍すれば、周りからチヤホヤされる。その環境に舞い上がり、成長が止まる選手もいる。自身がドラ1で新人王に輝き、主力になった岡田監督は“甘えの構造”を熟知しているからこそ、佐藤輝や森下に対してはっきり言うてるのではないか。
6月、7月と打率1割台に終わった佐藤輝は勝負の8月以降、3割3分0厘、12本塁打、45打点と爆発。終盤スランプに陥った森下は広島とのCS初戦で値千金の同点ソロを放った。岡田監督は「はっきり言うて」を巧みに使いながら、選手を操縦している――。
もしそう問いかけたら「いやいや、そんなもん関係ないやろ。アホなデータ取りよるな、はっきり言うて」と断じられるに違いない。
※参照:『実用日本語表現辞典』