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「何でゴロ打たんのやろ」阪神・岡田彰布監督の“怒り”に触れた3番・森下翔太…短期決戦で問われる“決断”「甲子園帰ってからやな」
posted2023/10/30 17:20
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
昔から短期決戦の日本シリーズには、さまざまな独特の戦法や戦い方が伝えられている。
“関西シリーズ”となった今年も開幕前に阪神・岡田彰布監督が初戦先発の村上頌樹投手に「探らせる」と言ったのも、その1つだったが、そうしたシリーズの戦い方の1つに「決断は躊躇するな」ということがある。
「チームに対する貢献度や彼のプライドはもちろん考える。でもシリーズには時間がない。決断は躊躇してはいけない」
短期決戦の指針
1989年。巨人と近鉄が戦った日本シリーズでの巨人・藤田元司監督の言葉だった。
このシリーズは初戦で4番を任せた原辰徳内野手(前巨人監督)が絶不調で、第4戦まで11打数無安打。その内容に藤田は即座に第2戦で「6番」に第3戦では「7番」に打順を下げる決断をしている。原といえば藤田監督の薫陶を受けて巨人の4番として育ててきた愛弟子ではある。それでもシーズン中ならまだしも、不調と見れば短期決戦のシリーズでは容赦無く決断しなければならない。
そして打席内容が上がってきたとみて打順を「5番」に上げた第5戦では、目の前で4番のウォーレン・クロマティ外野手が敬遠されて満塁策を取られた打席で試合を決める満塁本塁打を放ち、シリーズの流れを一気に引き寄せることになった。
「調子の悪い選手は打順をいじり場合によってはベンチに下げる。でも本来は力のある選手なんだから、常に状態を見て起用する。その時も躊躇しないで決断しなければならないんだよ。短期決戦は一瞬の決断の勝負だからね」
藤田監督の言葉は短期決戦の指針でもあった。
「なんとかやり返せて良かったなと」
さて「大阪決戦」となった今年の日本シリーズ。オリックスの中嶋聡監督は、まさに短期決戦の鉄則通りに躊躇ない決断で活路を開いている。