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プロ野球PRESSBACK NUMBER
森友哉は新今宮駅のホームから飛び降りた…“伝説の人命救助”、親友が明かす「ふたりでおじいちゃんを抱えて」「死ぬまで切れない縁」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/21 11:01
人命救助を行い、表彰される森友哉と久米健夫。大阪桐蔭時代から今に至るまでを同じポジションを争った同級生が振り返る
「うわ、大変だと思ってすぐに線路に飛び降りました。森も気づいて飛び降りて、2人でおじいちゃんを抱きかかえたんです。ホームの上から引っ張り上げてくれた人がいて、なんとか引き上げることができた。今考えると怖いですよね。森が電車に轢かれていたらえらいことですよ」
明かさなかった善行…遅刻は「電車が遅れた」
2人は男性を助け上げるとそのまま反対側の電車に乗って学校に向かった。少し遅刻してしまったが、自分たちの善行は明かさず「電車が遅れたので」と説明したのだという。数週間後、野球部に連絡が入った。名前も告げず立ち去ったヒーローを探していた男性の家族が、駅員が見ていた大阪桐蔭のカバンを手がかりに「お礼を言いたい」と2人にたどり着いたのだ。
「野球部長から駅で助けたやつおるか? と聞かれて、僕らですよって言ったら、それが大きなニュースになってビックリしました。僕らはその時、本当にそんなに大袈裟なこととは思ってなかったんです。ちょっといいことできたな、くらいの感じで」
伏線となった、ある日の出来事
そもそも新今宮は朝のラッシュ時には数分間隔で電車が行き来する大きな駅だ。命の危険もある状況で、なぜ躊躇せず線路へ飛び降りたのか。久米さんが「実は……」と明かす。
「その1、2週間くらい前のことなんですけど、遅くまで練習をして2人で帰る時に、駅のホームで突然おばあちゃんが転んだんです。手に持っていた買い物袋が落ちて、中の物がバーっと散らばってしまった。その時に、森がすぐに走って行って全部拾って袋に入れて手渡したんです。僕はその時ビックリして固まったまま動けなかった。何もできなかったんです。森の姿を見て、こいつ凄いな、野球だけじゃなく人間的にも凄い奴やと改めて感心していた。その直後の出来事だったので、おじいちゃんがホームに落ちた時、僕もすぐに反応できたんだと思います」
人命救助の前日譚。善行の陰には、困った人がいたら放ってはおけない18歳の熱いハートがあったのだ。