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プロ野球PRESSBACK NUMBER
森友哉は新今宮駅のホームから飛び降りた…“伝説の人命救助”、親友が明かす「ふたりでおじいちゃんを抱えて」「死ぬまで切れない縁」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/21 11:01
人命救助を行い、表彰される森友哉と久米健夫。大阪桐蔭時代から今に至るまでを同じポジションを争った同級生が振り返る
久米さんは激怒した
久米さんは関大進学後、目標通り1年生からキャッチャーのレギュラーを掴み、4年時にはキャプテンとしてチームを率いた。その後、社会人野球の東京ガスでも活躍し、2021年シーズン限りで現役を引退した。一方でプロ入りした森もルーキーイヤーから一軍で41試合に出場するなど頭角を現し、翌年以降は一軍定着。18年にはベストナイン、19年は打率.329で首位打者に輝きパ・リーグのMVPも獲得した。
2人の縁は、それぞれの道を辿りながらなお途切れることはなかった。オフの時間にはよく、食事を共にして野球談義に花を咲かせていたが、昨年春、森が右手指を骨折したことをきっかけにその道が再び交錯する。試合で交代後、自分自身に苛立ちキャッチャーマスクを投げつけたことが原因で故障したことに、久米さんは激怒した。その頃、東京ガスの社員として働きながら社会人野球時代の中田史弥トレーナーのもとで勉強していた久米さんは、誰より間近でその凄さを感じてきた才能を持ちながら、迷いが見える森に歯痒さを感じていたのだ。
体のことを見直すいい機会じゃないの
「もっと長く現役を続けるためにも、体のことを見直すいい機会じゃないの、という話をしました。僕も東京ガス時代、中田トレーナーと出会って意識が大きく変わったんです。野球はバットを振る事やボールを投げる技術ばかり目を向けられがちですが、バットとボールを持つのは体。その体を意図してコントロールできなければ、ボールやバットも思い通りに扱えないという事を叩き込んでいただき、成長する事が出来ました。森は昔から他の人が出来ないことを感覚的に出来てしまうタイプ。でも感覚だけでやっていると、年齢を重ねて身体の衰えが来た時に結果が出ないだろうと思ったんです」
お前が一人前になったって誰が決めんの?
リハビリを久米さんがサポートしたことがきっかけとなり、昨オフ、オリックスへFA移籍を決断した森から「一緒にやってほしい」と専属トレーナーを頼まれた。「まだ勉強したいから、一人前になってからやらせて欲しい」と一度は申し出を断ったが、森に「お前が一人前になったって誰が決めんの?」と説得されて翻意。東京ガスを退社して大阪に戻り、森と二人三脚の道を歩むことを決めた。