中田は日本ハム時代に後輩選手に対する暴力事件を起こし、球団から出場停止のペナルティが科され、後に巨人に無償トレードされた。落合さんの言っていた「そういうタイプ」とは、中田のそういう面、素行面を指していたのだと思う。我々スカウトも中田の素行面などは徹底的に調査を行っていた。ヤンチャな面はあるが指名を回避するほどではないという結論だったが、それでも落合さんは欲しがらなかった。

2004～2011年まで中日の監督を務めた落合博満　©Koji Asakura

中田は私の想像を超えるバッターだった

　中田はパンチ力もあったし、強烈なバッターだった。だが「プロではひょっとして通用しないかもしれない」という一抹の不安があった。なんでもかんでもボールに手を出す悪癖があったからだ。「アマチュアだから、金属バットだから打てているけど、あんなボールを振っていたらプロでは打てんぞ」と思った。素行云々以前にバッティングの技術的な面でクエスチョンマークがつく部分があったのだ。

　だが、そんな不安は杞憂だった。少々のボールでも打ちにいく姿勢があったからこそ、中田はプロでも成功した。中田は私の想像をはるかに超えるバッターだったのだ。

中田翔　©Hideki Sugiyama

　佐藤は甲子園でのスピードボールが話題になったが、元々はストライクゾーンの四隅にきっちり投げるコントロールを持ったピッチャーだった。だが3年になってスピードが速くなると同時にその良さが消えた。154キロくらい投げるようになっていたが、その分ストライクが入らなくなった。ただそのスピードと威力はやはり半端ではなかった。コントロールが悪くなっている点は気になったが、元々はコントロールの良いピッチャーだし、スピードが急激に上がったということはこの先の伸びしろもまだまだあるだろうと考え、この「東北の豪腕」を1巡目に選んだ。

　佐藤はヤクルト入団後、肘の故障などに苦しんだが、あれはスピードの出しすぎが原因だろうと思う。150キロを超えるボールを投げるために腕の振りが強すぎて、負荷に肘が耐えられなかったのだと思う。

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