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落合博満は中田翔18歳を欲しがらなかった…中日・元スカウト部長が告白する“近年の深刻な貧打”を招いたドラフト戦略の痛恨「間違っていた」
text by
中田宗男Muneo Nakata
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/21 11:04
低迷する中日で叫ばれる「打てない打線」。元スカウト部長が“ある後悔”を明かした
佐藤、岩嵜と外して、外れの外れで指名したのは浦和学院高の右腕、赤坂和幸だった。赤坂のことは当初からピッチャーとして評価していた。だがあるときからボールがいかない、ストライクも入らないイップスのような状態になってしまった。そんなふうにピッチャーとして不調になってしまった頃、たまたま見た試合で赤坂は目の覚めるような打球を飛ばしていた。「これ、バッターのほうがいいんじゃないか?」とその試合で打者としての評価が上がった。その後、ピッチャーとしても復調し、150キロは出なかったがそこそこのボールを投げた。そんな投・打の素材の良さを評価して1巡目候補として置いておこうとなった。だから岩嵜を外した後は、すぐに赤坂の名前が挙がった。とりあえず初めはピッチャーをやらせてみて、ダメだったら野手として、そんなことを考えての指名だった。
野手ドラフトの後悔「間違っていた」
広島が3巡目で指名した千葉経大附高の丸佳浩(現巨人)は、バッティングセンスは良いなと思ったが、走攻守のどれもが突き抜けていない、中途半端な選手に見えた。だから広島に入ってあそこまで長打を打てる、高い次元の三拍子が揃った選手になるとは思わなかった。ソフトバンク3巡目の帝京高の中村晃は、独特のタイミングのとり方だったが、良いバッティングをする、光るものがある選手だった。だがプロで果たしてどこを守るのか? という点から、ちょっとプロでは難しいかなと思った。
後々考えると、明治大の佐野恵太(2016年DeNA9位)、横浜高の近藤健介(2011年日本ハム4位/現ソフトバンク)もそうだが、一種独特の「自分の形で打てる選手」というのはプロで大成している。打てる才能がある選手は、ポジション云々に関係なく獲らないといけなかった。
中日が近年、打てない、打てないと批判されているが、やっぱり打つことに特化した選手を獲ってこなかったことにも原因がある。広いナゴヤドームが本拠地である以上「野手は守れないと獲れない」という不文律が自分のなかにあり、そういう選手を積極的に獲ろうとしなかった。それが間違っていたのだと、今になって思う。