9回は7番の打順からだったが、マサは追い込んでからフルカウントとし、6球目もファウルで粘られた。

　私の脳裏には、2000年ワールドシリーズで、ポール・オニールに対してアーマンド・ベニテスが投げたシーンがフラッシュバックしてきた。オニールは9回の先頭打者で、ファウルを5本打った後四球を選んだ。ホークスの7番打者は7球目でボールを選び、フォアボールで歩いた。次の打者がバントしてくることは確信していたが、打球はキャッチャー後方に上がった。キャッチャーの里崎は一瞬前に出てから後ろに走り、ダイビングキャッチを試みたが、ボールはミットをかすめてファウルグラウンドに転がった。次の球で送りバントを決められ、ランナーは二塁に進んだ。

私を宙に放り上げ、キャッチ。また投げ上げ、キャッチ

　王監督はタイムを要求し、ゆっくりとした動きでベンチを出て球審に代打を告げた。左打ちのベテランが打席に入ったが、マサは二塁へのフライに仕留めた。我々が1点リードで9回ツーアウト二塁となって、4万人の大観衆が立ち上がり、悲鳴のような歓声を上げる中、一番バッターの川﨑が打席に入った。

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　私は彼を歩かそうかとも考えたが、マサが打ち取れるかどうか定かではなかったものの、決勝のランナーを塁に出すことはしたくなかった。私はコーチのフランク・ランペンを見た。彼は戸惑った表情で私を見ながら「また同じことが？」と聞きたそうだった。

　カウントは0−1からの2球目、マサは真ん中低めにストレートを投げたが、川﨑は捉えきれず、外野に上がったフライをレフトの井上純がつかみ、千葉ロッテマリーンズはパシフィックリーグチャンピオンとなった。

　私は気がつくとグラウンドに駆け出していて、チームの全員がマウンドの向こうで跳びはね、お互いにハグをし合っていた。そして、何が起きているのかわからないまま、10人ぐらいの選手が私の両脚と両肩をつかみ、身体を持ち上げた。日本で優勝をしたときの伝統的な方法で、彼らは私を宙に放り上げ、そしてキャッチした。また投げ上げ、キャッチ。また投げ上げ、キャッチを繰り返した。

バレンタインが感じ取った「胴上げ」の意味するもの

　象徴を重視するこの国で、この儀式は、優勝をするには2つの要素が必要だと言うことを表している――信頼とチームワークだ。シーズン中、チームは監督を信じなければならない。そして優勝を成し遂げた後、監督は選手たちが胴上げをするチームワークを持っていることを知っておかなければならない。そして彼は空中に投げられても必ず捕まえてくれるのだと、選手たちを信頼している。私は宙を舞っている間、人生で最もリラックスした状態にあった。大きな笑みをこぼしていた。井上がウィニングボールを渡してくれていたので、私はそれを手につかんだまま、何度も胴上げされた。足を揃え、両手を宙に突き出して。ユニフォームを着ている、いないに関わらず、私がそれまでに経験した最高の感覚だった。

　そして、我々はダッグアウトから背番号26のユニフォームを持ち出し、チーム全員で応援団の下へ走って行った。狂喜する我々のファンに見えるよう、背番号26のユニフォームを高く掲げた。感動したのは、ホークスファンがすぐには帰らず、客席に残っていたことだ。我々のファンが飛び跳ね、声を上げ、ハグをして泣いている間、彼らは敬意を持って立ったまま拍手を送ってくれた。

　これ以上ない経験ができた夜だった。私は永遠にこの瞬間を大切にするだろう。

＜「ボビーマジックの真実」編とあわせて読む＞

#4に続く

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