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ラグビーPRESSBACK NUMBER
プロポーズは“聖地・秩父宮”、結婚直後に靭帯断裂…ラグビーW杯に人生を懸ける夫を支えたラガーマンの妻「プロップは優しくて力持ち」
posted2023/09/25 11:07
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Kana Kakinaga
“ラガーマンの妻”はエネルギッシュだ。待ち合わせ場所に現れた香奈さんは、佳麗な佇まいとは裏腹、チャイルドシート付きの重厚なママチャリを巧みに操りながら朗らかに笑った。
「選手のご家族の方は皆さんタフだと思います。怪我の心配は絶えないし、育児はほぼ“ワンオペ”。だから選手の家族同士は仲がよくて、よく助け合っています」
合宿、試合、遠征、代表活動……。ラグビー選手は家を離れる時間も長い。香奈さんも仕事をしながら4歳の長男の子育てに奔走する多忙な毎日だ。
「普通のパパより家にいない時間は長いと思うんですが、家にいる時は全力で息子と遊んでくれるし、家事も協力してくれる。子供はパパがいると楽しいので、合宿に出発する時など別れ際はいつも大泣きなんです」
まだラグビーに興味がないという長男は、パパがW杯に出場するという喜びより、不在の寂しさの方が大きいのだという。
2度の落選……31歳で初めてのW杯
垣永真之介。スクラムの要を務める「カッキー」は、チーム1のムードメーカーだ。試合中はトレードマークでもある雄叫びで盛り上げ、グラウンドを離れてもSNSなどで愛嬌たっぷりに情報を発信している。
ラグビーの名門・東福岡高校、早稲田大学でいずれもキャプテンを務めるなど経歴は実に華やか。一方で度重なる怪我との戦いなど、その道のりは平坦ではなかった。2014年に代表初キャップを獲得したが、15年イングランド大会はバックアップメンバーの一員として支え、19年日本大会は選外。31歳で迎えた今大会で初めてW杯にたどり着いた。
代表入りが内定したのは8月5日夜。フィジー代表との国際マッチ後にジェイミー・ジョセフHCが選手たちに内々にメンバーを発表し、香奈さんの元にも垣永からメッセージが届いた。
「お互い“おめでとう!わーい”と浮かれる感じはなく、喜びを噛み締めるような……。主人の場合は苦しかった時期も長かったので、本当に頑張ったね、長かったね、という思いでした」
苦楽を共にした二人三脚の歩みは、どんなものだったのか。