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ラグビーPRESSBACK NUMBER
プロポーズは“聖地・秩父宮”、結婚直後に靭帯断裂…ラグビーW杯に人生を懸ける夫を支えたラガーマンの妻「プロップは優しくて力持ち」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKana Kakinaga
posted2023/09/25 11:07
妻・香奈さん(右)の支えもあり、31歳にして初のラグビーW杯代表の座を掴んだプロップ垣永真之介(31歳)
香奈さんが友人の紹介で垣永と知り合ったのは大学1年生だった2010年。当時は恋愛には発展しなかったが、大学4年時にひょんなことから再び連絡を取り始め、2人きりで会う機会が訪れた。後楽園で待ち合わせをしていたが、アルバイトの仕事で急なトラブルがあった香奈さんは予定に2時間も遅刻してしまったという。
「連絡もできず、さすがにもう帰っているだろうな、と思ったら待っていてくれたんです。しかも会った第一声が『全然待っていないよ。ここは初めて来たし、一人でお散歩していて楽しかったから』と。その時に私、『この人だ!』と思いました。普通なら2時間待たされた後にこんな言葉はかけられないなと、なんだか感銘を受けてしまって」
当時は早稲田大のキャプテンとしてチームを率いていた頃だ。「気は優しくて力持ち」を体現するフロントローに香奈さんはすっかり心を奪われた。垣永は付き合いだした当初から「3年後にプロポーズするから」と言い続けてきたというが、その言葉は思いもかけぬ形で実現する。
聖地・秩父宮でのプロポーズ
3年後の2016年1月、秩父宮ラグビー場。垣永が所属するサントリーの試合を観戦後、バックスタンドに残っていた香奈さんの元に、ロッカールームに引き上げたはずの垣永が、猛ダッシュで戻ってきた。グラウンドから、スタンドへ向けて指輪を差し出して……。
「実は一緒に見ていた私の姉とも打ち合わせての“サプライズ”だったみたい。彼、滑舌はあまりよくないから、聞き逃すまいと一生懸命言葉を聞き取りました(笑)。『苦しいことがあっても、辛いことがあっても、香奈ちゃんに傍にいてほしいと思ったから。結婚してほしい』というような言葉を伝えてくれました。嬉しかったですね。この言葉は今でも時々思い返しては、初心に戻るんです」
垣永の一世一代のプロポーズ。たまたまスタンドに残っていた見ず知らずのラグビーファンのおじさんも拍手を送るなか、聖地・秩父宮に二人のメモリアルが刻まれたのだった。