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「ラグビーとスクラムは別競技」の声も…《W杯イングランド戦》敗れてもなお“収穫アリ”日本代表チームが自信を深めた「ある理由」
posted2023/09/21 17:03
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph by
AFLO
日本代表がスクラムを押し込んだ。開幕2連勝を狙ったイングランド代表戦の19分15秒。相手ボールのスクラムだった。
PR稲垣啓太。HO堀江翔太。PR具智元。百戦錬磨のトリオを最前列に据えた8人の塊が、じわり前に出る。スクラムを武器とするラグビー発祥国の八の字が、歪んだ。
2023年フランスW杯。プールステージ第2戦。南仏ニースで行われるイングランド戦へ向けた具智元の戦前コメントは、怒りのオーラを帯びていた。
「絶対やり返せるという自信があるので、すごく楽しみです」
22年11月の前回対戦で、世界屈指のスクラムマンである具は、一度に2度の敗北を味わった。
一つはチームの大敗(13-52)。もう一つはスクラムバトルの劣勢だ。存在意義を揺さぶられた男はリベンジを誓った。
「去年のイングランド戦で、最初に3本連続で(反則を)取られてしまいました。悔しい思いをして負けてしまったので、ワールドカップの中では一番(パフォーマンスを)見せたいと思う試合です」
長谷川慎コーチの作り上げた「日本流スクラム」
やり返す。
その思いは日本が世界に誇る“スクラムドクター”、日本代表の長谷川慎アシスタントコーチも同じだったかもしれない。
長谷川コーチにとってフランスは一つの原点だ。
10年にサントリーの会社員からプロコーチに転身すると、翌11年、フランスへのコーチ修行を敢行した。各地で多種多様なスクラム理論に触れ、みずからも「力を漏らさない」「後列5人の力を伝える」「相手の力を70%にする」といった長谷川式を創り上げた。
12年の月日が経ち、プロコーチとして駆け出しだった元W杯戦士は、日本代表のスクラムコーチとして原点フランスに回帰した。
オリジナリティ追求を後押ししてくれたフランスで迎えた、強国イングランドとの“スクラム大戦”。長谷川コーチは攻撃的なマインドを選手に仕込んだ。