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《空飛ぶGKが起死回生ヘディング弾》不運の鎌田大地にサッリ親分が「気落ちしてはならん!」CL初戦ラツィオ男気ドローを現地取材
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAP/AFLO
posted2023/09/20 17:55
アトレティコのエースであるグリーズマンと競り合う鎌田大地。ラツィオはGKのヘディングシュートという形で勝ち点1を確保した
相手MFバリオスが29分に放った右足ミドルは、鎌田の伸ばした左足に当たってコースが変わった。昨季のセリエA最優秀GKプロヴェデルといえども反応できず、自陣ゴールに吸い込まれるボールを見送るしかできなかった。
守勢だったA・マドリーが最初に放ったシュートで先制したことで、ゲームの潮目が変わった。CLでの堅守で知られるA・マドリーは、アウェーゲームで得たリードを守り切ることだけを考えればいい。ラツィオが前がかりになればなるほど彼らの思うツボだ。
インモービレらが苦しむ中で守護神は必死だった
「ここで気落ちしてはならん!」
サッリ親分は失点直後、テクニカルエリアから最も近い鎌田に発破をかけた。鎌田は3トップと並ぶアタッカーとしての役割を負っていた。後半に入っても鎌田はエースFWインモービレへクロスを試み、セットプレーからの流れで積極的にゴールを狙い続けた。
だが、シーズン序盤に連敗したときから指揮官が懸念する通り、今季のラツィオにはゴールへの狡猾さやフィニッシュへの執念が欠けている。56分にFWインモービレがゴール前10mでのシュートを相手GKの真正面へ安易に打ってしまった場面が象徴的だ。
インモービレとともに最前線でファーストプレスをかけ続けた鎌田が60分、パスミスをするとオリンピコには大きなため息と控えめなブーイングが漏れた。2分後に鎌田と交代したMFゲンドゥージも流れを変えられない。
66分に打たれたアトレティコFWモラタのシュートは右ポストに救われたが、ラツィオは71分に再び相手カウンターから失点のピンチを迎えた。
自陣ペナルティエリアに猛然と突っ込む相手DFリーノをラツィオGKプロヴェデルは視界にしっかりと捉えると、自らも敢然とダッシュ。全身でコースを塞ぎ、至近距離シュートを顔面でブロックするビッグセーブでチームの危機を救った。
最後の左CKで奇跡は起きた
ただし、後半残り15分にはフィールドプレーヤーを全員自陣に戻し、ダーティなタックルも厭わないA・マドリーからゴールを奪うのは、どんなクラブにとっても至難の業だ。途中出場したMFカタルディが後半アディショナルタイムに放った右足ミドルも相手GKオブラクの好セーブに阻まれ、誰もが万事休すと観念した。
最後の左CKで奇跡は起きた。