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《空飛ぶGKが起死回生ヘディング弾》不運の鎌田大地にサッリ親分が「気落ちしてはならん!」CL初戦ラツィオ男気ドローを現地取材 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byAP/AFLO

posted2023/09/20 17:55

《空飛ぶGKが起死回生ヘディング弾》不運の鎌田大地にサッリ親分が「気落ちしてはならん!」CL初戦ラツィオ男気ドローを現地取材<Number Web> photograph by AP/AFLO

アトレティコのエースであるグリーズマンと競り合う鎌田大地。ラツィオはGKのヘディングシュートという形で勝ち点1を確保した

 低いキックをニアポストで落としたのはアトレティコDFエルモーソだ。こぼれ球をMFカタルディがすかさず拾い、L・アルベルトへつなぐと、司令塔は天才画家の筆遣いでクロスを送り、194cmの守護神が宙を舞った。ピンポイントで合わせて流し込む、一流ストライカー顔負けの華麗なヘディングゴールだった。

「イル・ポルティエーレ・ヴォランテ!(空飛ぶGK)」

 ゴールとともに試合終了の笛が吹かれ、オリンピコにはラツィオを救った英雄を称えるコールが乱れ飛ぶ。

 主将インモービレ以下チーム全員は、劇的なドローの高揚感ですっかり精気を取り戻したと見え、スタンドのファンへ感謝を告げる表情も紅潮している。歓喜で飛び跳ねるラツィアーレたちで、オリンピコは揺れた。

前半から我々の手の内にあったというのがワシの考えだ

「こんな風にやられたゲームはあまり記憶がない。ラツィオは最後の最後まであきらめなかった。GKのゴールは素晴らしかったよ」

 手中にあった勝ち点3をラストプレーで取りこぼしたシメオネ監督は渋い顔だったが、自身の最盛期ともいえる現役時代を過ごした古巣への賛辞も忘れなかった。

 ピッチ上で怖い者知らずの強面MFだった彼がラツィオに入団した99-00年シーズン、クラブは初めてCLに挑んだ。DFミハイロビッチ(故人)のゴールで引き分けたレバークーゼンとの開幕戦のスコアも1−1だった。

 欧州屈指の強豪だった当時のラツィオは、1次リーグを4勝2分で勝ち抜け、マルセイユとチェルシー、フェイエノールトと激突した2次リーグも突破、初出場ながらベスト8に進出している。

 当時、イタリア6部にあたる州リーグの無名指導者だったサッリは、2023年の開幕戦黒星を逃れて一息ついた表情を浮かべる。

「この勝ち点1は大きい。チームの士気を随分と高めてくれるだろう。失点は不運だったが得点という形にならなかっただけで、ゲームは前半から我々の手の内にあったというのがワシの考えだ。グループ勝ち抜けの有力候補であるA・マドリー相手にここまでやれたのだ。結果以上に今夜のプレー内容は我々の自信になる」

今夜のように一瞬ですべてが好転することだってある

 芸術的アシストを決めた司令塔ルイス・アルベルトは顔中に汗と笑みを浮かべている。

「本当に嬉しい夜だ。今、チームは難しい状態にあるけれど、サッカーには今夜の試合のように一瞬ですべてが好転することだってある」

 グループEの次戦は、日本人5選手が待つセルティック相手のグラスゴー遠征だ。 

 劇的ドローで始まった今季のCLロードで、ラツィオと鎌田は今後どんなドラマを見せてくれるだろうか。

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